初心者の短歌日記:3月 その1

 

 

 卯野抹茶 (id:macchauno) さんの主催するイベント「短歌の目」の3月分に参加したので、自作について少し制作過程や意図を書いておこうと思う。

書かないと忘れてしまう部分が多いし、実際すでに忘れかけている。

自分はこれまで短歌を詠む機会がなかったが、それは「俳句」か「短歌」かでいうと圧倒的に俳句側の人間で、とにかく短歌は三十一文字が長すぎ、退屈すぎ、書くことなさすぎと思っていたからである。

しかし2月の「短歌の目」を見てちょっとやろうかなという気になったのは、普段からブログを読んでいる書き手が何人か参加していたのと、お題が出るのでやり易い気がしたからである。

ただ2月はちょっと回文に熱中しすぎていたので、短歌は詠む余裕がなかった。

卯野さんの感想にもあるように「回文で短歌詠まれるという変態さん」という線も考えたのだが、五七五程度ならそこそこできても、三十一文字というのはその数十倍ハードルが高い。労力がかかりそうな割には報われなさそうだし、回文で短歌を作っている人の作品を読んでも意味がわからないものがほとんどなのでやめた。

これまでに考えた回文の世界と通じるような、回文の続編のような短歌にしようという考えもあったのだが、それも内輪受け狙いのようで見苦しいよなと思っているうちに3月のお題が出た。実はお題が出る以前に断片的なフレーズやメモを少々作っていたので、それとお題から喚起されたイメージを掛け合わせて詠んでみた。

読むのはせいぜい塚本邦雄寺山修司くらいで、たまたまお題の出る直前に笹公人の歌集を再読していたので、その辺りの影響が少しある。

 

1.雛

有事なら雛らと並ぶGIジョー 迷彩模様の民族衣装

 

「お雛様の姿は、いわば日本の民族衣装のようなものだ」という見方と「アメリカはそういう特定の服装がないから迷彩模様のミリタリー・ルックみたいなのが民族衣装かな」と考えているうちに、一緒に戦っている姿が頭に浮かんだ。

あまり説明くさい短歌はよくないと思うのだが、これは説明や状況が曖昧で、明らかに推敲不足の作なので、読んでもらった人には申し訳ない気持ちがある。「これは意味不明だな」と思った方は正しい感覚を持っている人である。

 


2.苺

盲目の坊やが盗む小ナイフ 苺の皮剥き運指の妙技

 

苺というお題から考えたのが「苺の皮を剥いて食べる子供がいたら面白い」ということで、過保護に育てられた神経質なお坊ちゃまのイメージである。

盲目なのに器用にチョイチョイと皮を剥いて食べるという図である。

後半は「手つき」という言葉を入れるつもりが収まりきれなくなった。「皮剥き」「運指」「妙技」とで意味が重なっているし、体言止めが多いのはよくないらしいので、これも推敲の余地があるかと思う。

 


3.夕

夕べ観た無声映画の斬首人 罪と鴉と影と血の色

 

夕という字を見てすぐ「夕べ観た無声映画」という言葉がすらすら出てきた。

「首を切り落とす方も深い闇を抱えこんでいそうである」と書きたかったのだが、やはり説明過剰になる気がしていじっているうちに、後半は名詞だけになってしまった。これも体言止めが二回でくどい。

 


4.ひとり言

イヒヒ姫とニタ郎サンバに合わせて呪文ふた筋のひとり言

 

「イヒヒ姫とニタ郎」というのは「一姫二太郎」のもじりで「いつもイヒヒと笑っているお姫様と、いつもニタニタしている弟である」というメモがあって、それを当てはめた。

それぞれ勝手に呪文を唱えているという姿である。「ふた筋のひとり言」というのは狂気を感じさせる。

句跨りで57577からずれている短歌が好きなので、これは変なリズム(64895で合計32音くらい)にできて嬉しい。

 


5.揺らぎ

揺らぎすぎ二重に見えるペコの首 ヤマザキ春の電撃移籍

 

不二家のペコちゃん人形は頭を叩くとユラユラ揺れる。しかし周囲から見ても二重に見えるし、ペコちゃん本人の視界のようでもあるし、この表現こそブレブレで揺れてしまっている。

後半はペコちゃんが急にヤマザキパンに移籍したら面白いだろうなと思って、「ヤマザキ春のパン祭り」という75調をなぞっただけである。

 

こうして自作を見直してみると、そもそも描こうとする場面や意図が曖昧であるし、推敲にもう少し時間をかけて検討するべきと思う。

日頃ブログの文章を書くときはなるべく体言止めは避けたいと思っているのだが、短歌だと言葉を押し込めすぎてすぐ体言止めになってしまう。

 

本屋で穂村弘「短歌の友人」と西加奈子せきしろの「ダイオウイカは知らないでしょう」を買ってきたので、読んで短歌のことを少し学びたい。

 

短歌の友人 (河出文庫)

短歌の友人 (河出文庫)

 

 

6~10は「その2」↓に続く。

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