春を感じるとき

 

 

今週のお題特別編「春を感じるとき」
〈春のブログキャンペーン 第1週〉

我が家の隣のスペースは近所に住む某さんの畑になっていて、某さんは素人とは思えないレベルでせっせと畑を耕し、肥料を与え、作物を育てている。収穫した作物を気前よく分けてくれたりもして、決して悪い人ではないのだが……。

この人は機嫌のよい時に口笛を吹き始めるので、実に実に実に困っている。

この口笛というのが何の曲だかわからない独特の口笛で、ピューピューピーピーうるさくて、聞こえてくると耳障りで参るのだ。とにかく「口笛」という些細な楽器が、これほどまでに鬱陶しくて邪魔で手に負えない凶悪な刺激物になり得るかということを嫌というほど教えていただいた。

「あの~、某さんはいつも、畑仕事をされている時に口笛を吹かれていますよね?あれって聞かされる方は大変に迷惑なので、少し遠慮していただけると助かるんですけど~」

なんて言えれば済む話なのかもしれないが、近所づきあいを考えるとまず言えない。

ちなみにこの人の奥さんもうるさい人で、地声がやたらに大きい。常に頭のてっぺんと口と背中から同時に声を拡散しているようで、能天気にキーキーガーガーわめく。歩く騒音公害と言ったら言い過ぎかもしれないが、迷惑防止条例か何かに引っかかっていそうな程度には迷惑なレベルである。勿論、この人にも「生まれつきの声のボリュームが大きすぎるので、もっと地声を小さくして下さい」などとは言えない。

そういう訳で、さすがに冬場だけは畑仕事をしない某さんの口笛が聞こえてくると、

「ああ、春の訪れだなあ」

と思わざるを得ない。

「隣人の口笛に春を感じる」などと書くと風流で、それこそ俳句や短歌の題材になりそうだが、春の訪れを耳から思い知らされて、苦虫を噛み潰したような顔になって、遣る瀬無い気持ちになって、心の中で泣いている気の毒な人も世の中にはいるのである。


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