嬉しかった言葉

 

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今週のお題特別編「嬉しかった言葉 」
〈春のブログキャンペーン ファイナル〉

私は保険の仕事をしているので「今度、こういう商品が出ました」とか「医療保険もいかがですか」とか、毎日そんな話ばかりしている。

お客様側にも色々あって、親戚や友人か、それ以上の親密さで話を聞いてもらえる場合もあるし、余計な話は一切聞かない、パンフレットやチラシもいらない、と頑なに全否定される場合もある。

話をする側から少しアドバイスすると、見当違いのトンチンカンな提案やお勧めばかりを何度もしてくる営業マンは当然ながら避けた方がよい。そこまで酷くない場合は、なるべく一人より二人、二人よりは三人で話を聞く方がよい。一人よりは夫婦揃って聞いた方が、よい話とそうでない話をチェックする精度が大幅に高まる筈である。

「うちは夫婦揃って馬鹿ですからね~、よくご説明いただいても忘れちゃうんですよね~」

なんて言った方が、かえって営業する側は慎重に構えて良い提案をしてくれる筈である。知ったかぶりして「ハイハイ、自動車も火災も地震保険も、がん保険のことも、何でも知っていますよ!お宅の会社が怪しいってこともね!」なんて言うのは絶対に避けた方がいい。知ったかぶりの逆を何と言うべきか分からないが、そこそこ無知を演じるくらいで丁度よいのである。

ある時、一人暮らしのお婆さんの家に行って、火災保険の更新をするついでに医療保険の相談を受けたことがあった。六十~七十代で医療保険に入ろうという人は、これまで全く入っていなかったか、今入っている保険に不満があるか、大抵どちらかである。その上、いくら「入りたい」と言われても病気だと謝絶、健康でも保険料が高くなりすぎて勧めにくい。それでも色々と話を聞いて、あれこれ話をした。

このとき、お婆さんの家には何故か、若く美しい女性がいて赤ちゃんをあやしたり、おしめを取り替えたりしていた。私とお婆さんの話に入る訳でもなく、聞いているのかいないのかも不明という絶妙の距離感でやや離れた所にいたのだが、急にこっちにツカツカと歩いてきて、

 

「お婆ちゃん!この人の言う通りに、その医療保険に入った方がいいよ!さっきからこの人の言ってることは、いつも来てる何とか生命のカントカって人よりずっとマトモだよ!絶対に入りなよ!」

 

と言って味方してくれたのであった。

こんな風に、唐突に助け舟が現れてくれるという事態は、後にも先にもこれっきりではないかと思えるほどの名台詞である。

聞けばこの美女はお婆さんの孫で、様々な事情があって娘のように育てられたのだという。赤ちゃんはひ孫である。

結局、このお婆さんの医療保険は契約まで結びついたので、実に良かった。

正しくこれは言われて嬉しかった言葉ベスト1だが、本当に嬉しくなってきたのはかなり後になってからのことで、その時はあまりにも理想的な流れ過ぎたので、呆気にとられて驚くことも喜ぶこともできなかった。

 

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