部屋の片づけをしていて、たまたま古新聞の切り抜きが出てくると時間を忘れて読みふけってしまう。そういうことが二、三回あったので、
「新聞の切り抜きをスクラップ帳に貼っておく」
という習慣は、金銭のかからない遊びとしては相当いい線を行っているよなと思ったのであった。
自分の場合、該当記事だけを丁寧に切るのが面倒だから、新聞紙の一枚をまるごと保管しておくというケースも結構ある。
古い雑誌の間などからピラッとそういうものが出てくるだけで、
「一体この紙面全体の、どの記事のどういう点を『残すべきもの』と判断したのか?」
という謎解きと宝探しを楽しむことができる。
現在の自分と過去の自分とのスリリングな知恵比べである(審判も自分)。
もともと新聞は雑多な内容の寄せ集め的な内容で、しかも表と裏が必ずあって、バラバラの紙にすると隣のページ同士の関係性も消えて無くなる。
よって後から読むと、たった一枚でも意外性満点の、バラエティ豊かな文章の集積になるのだ。
つまり、新聞の切り抜きとは、
ものぐさな人間のための自己流アンソロジーであり、
文字によるノイズ・ミュージックの束であり、
情報を醗酵させた手間いらずの漬物であり、
存在すらすぐに忘れ去られる隠し扉であり、
忘れた頃に浮上する不死身の潜水艦であり、
未来の自分に残す知的文化遺産でもある。
他にもいろいろ言えそうだが、あらゆる他の趣味や遊びと比べてみても、相当に節約度の高い娯楽であることは確実である。
欠点としては、他の人と面白さを共有できないことと、時間がかかり過ぎることであろうか。
ただ、根本的にやっていることがゴミのリサイクル(再利用)だけだし、他人との競争や上達がない気楽さがいい。
古い本だが「B級ニュース図鑑」はそういう楽しさで満ちていた。
あとついでに「テレビ欄」シリーズも。
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