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雑誌卍固め:「ケトル VOL.27 松本清張が大好き!」

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このブログには不定期に書かれる、ブログ内の別ブログとでもいったカテゴリーがあって、たとえば時々思い出したかのように書かれる「雑誌卍固め」もその一つである。

今回は、これまで一度も買ったことがなく、どんな雑誌であるかすら全く印象にない雑誌「ケトル」を読んでみた。

 

www.ohtabooks.com

 

何と言っても、この表紙で、

【特集】松本清張が大好き!

という、文芸誌以外の雑誌では通常あり得ないような特集をやっているのに惹かれたからである。

 

ケトル VOL.27

ケトル VOL.27

 

 

表紙絵と監修がみうらじゅんで、総論も各作品解説のコメントも隅々まで熱い。

目次は以下の通りである。

 

みうらじゅん松本清張
「清張文学とはボブ・ディランの歌であり、仏教書である」
みうらじゅんと読む20作品
No.1『ゼロの焦点』/ No.2『証言』/ No.3『たづたづし』
No.4『内海の輪』/ No.5『書道教授』/ No.6『事故』/ No.7『遠い接近』/ No.8『黒い福音』/ No.9『赤いくじ』
No.10『天城越え』/No.11『恩誼の紐』/No.12『潜在光景』/No.13『小説帝銀事件
No.14『月』/No.15『駅路』/No.16『二階』
No.17『絵はがきの少女』/No.18『巻頭区の女』/No.19『遠くからの声』
No.20『鬼畜』
●マツキヨから学ぶ! ①浮気・お金・保身……清張が描いたサラリーマンの法則
速水健朗が語る松本清張「清張の描く殺人と恋愛が 日本の観光産業を支えた」
●マツキヨから学ぶ! ②「女の顔」はひとつじゃない! 清張作品に登場する女たち
●マツキヨから学ぶ! ③謀略・策略の裏には、いつだって「食」がある
●西村京太郎が語る松本清張推理小説家にとって、偉大な目の上のたんこぶ」
●チャレンジ! 松本清張 清張作品を片手に崖巡り! 見よ! これが本物のグットクリフだ!
松本清張の「モノ」図鑑 新聞を広げれば人生だってひらけます
新聞/煙草/引き出し/すずり/トラック/印刷機
●観ると悪さができなくなる 胸に手を当てる清張映像作品30本
●清張を読むならこれも読め! 点が線で一気につながる本30冊
●地図と時刻表が相棒だった 松本清張を読み解く6つのピース
小倉/印刷/森鷗外/週刊誌/昭和史/旅
松本清張好きなら読んでて当然? 小説作品コンプリート表!

●ロングインタビュー 壇蜜
~悪女って、サンタクロースなのだと思います~

●正田真弘写真劇場
「その静かで大きな存在から、不変と無常を思い巡らす。」 モデル/Mr. オクレ

●review 40人のここが気になる
青柳文子 阿部洋介 伊賀大介 大澤真幸 大根 仁 尾形真理子 小崎哲哉 架神恭介
金原由佳 小島慶子 小杉幸一 小宮山雄飛 桜井圭介 桜川和樹 佐々木 敦 佐藤 優
椹木野衣 高橋健太郎 TAKUYA 中条省平 辻川幸一郎 遠山正道 轟 夕起夫 豊﨑由美
豊竹咲甫大夫 橋爪大三郎 HACHI 幅 允孝 林 雄司 林 裕 速水健朗 平川克美 文月悠光
堀部篤史 前島秀国 前田有一 山形浩生 米光一成 寄藤文平 渡辺 亨(五十音順)

  

 

さらにインタビューは西村京太郎、壇蜜と豪華で、各ページ下の一行ネタや映画関係の小ネタまで密かに充実している。

ところが何と、この特集は現代ものの作品が中心で、時代ものに関する案内やコメントがほとんどゼロなのであった。

私の場合、もともと現代ものにはさほど興味が湧かず、あまり読んでいない。少し読んだ小説や映画の中では、やたらと不義密通や権力争いや貧困や復讐や保険金殺人が出てくるという印象しかない。その後、たまたま時代物を読んだら意外なほど読みやすく無駄がなく面白かったので、そのまま続けて何冊か読んだという程度のファンである。

それでもこの特集はかなり面白く読めた。やはり松本清張という人自体が、顔も性格も経歴も強烈で、かつ愛嬌がある点と、2015年の今だからこそ作風の幅の広さや先駆的な業績がよく見渡せるという点があるからではないか。

例えば二時間ドラマのクライマックスで、真犯人と刑事が崖に立ってやり取りをするというスタイルは松本清張が元祖だというし、「家政婦は見た!」シリーズの第一話も松本清張の原作だという。さらにマイクル・クライトンの科学技術スリラーは清張作品と一脈通じるという意見もあった。

私も以前、清張のある短篇を読みながら、半村良の伝奇SFや白土三平の漫画との類似性を感じた(発表順としては清張の方が先)ことがあったし、時代物の短篇に時々、落語のような味わいを感じることもある。もう一つ二つ、「これと似ている!」と力説したくなるような珍説があるのだが、それは長くなるので別の機会に書きたい。

 

特集以外では「40人のここが気になる」という有名人やライターによるコラム集があって、いかにも雑誌らしい雰囲気が漂っている。

しかし普段からはてなブログ人気エントリーをチラホラと斜め読みしている身としては、素人のブログと大差ない文章が並んでいるようにしか見えない。自作の宣伝だけしかしない人、他人の小説のあらすじを詳しく書いているだけの人、文章でワーワーキャーキャー騒ぐだけの人もいる。仮に彼らの書くブログがあったとして、タダでも読むのが面倒だし、本業にも興味がわかない。

となると、さほど遠くない将来に電子書籍版の雑誌では「特集」と「それ以外」の部分のバラ売りがされるようになって、後者の需要はゼロに近づくのではないだろうか。既に「東洋経済」「週刊ダイヤモンド」は特集のみのバラ売りをしているし、「将棋世界」は付録だけを別売りしている。

 

天国と地獄?(将棋世界2015年12月号付録)
 

 

全ての雑誌の特集以外がどれも皆つまらないという訳ではないし、全てのブログが雑誌より面白い筈はないが、雑文の面白さを雑誌から奪い取ってしまったのは、明らかに素人の書くブログである。

 
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