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営業の役に立った本:「赤めだか」立川談春

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前々から「営業と関係がないのに営業の役に立った本」というテーマで本を挙げていくコーナーを考え続けていたのだが、そのうちに「営業と関係があって営業の役に立った本」と分ける必要がないように思えてきた。

 

 

つまり、いかにも書店のビジネス書コーナーの「営業」ゾーンにあるような本であろうと、そこに置かれていない本であろうと、分け隔てなく扱った方が意外性があって面白いだろうという気になってきたのである。

よって今回から「営業の役に立った本」というカテゴリーを作って、ポツポツと本を紹介していくことにする。

記念すべき第一回目は、最近とうとう文庫化された立川談春の「赤めだか」である。

 

赤めだか (扶桑社文庫)

赤めだか (扶桑社文庫)

 

 

 二宮和也ビートたけし出演! テレビドラマ化決定!
<12月28日(月)よる9時~ TBS系で放送>
笑って泣いて胸に沁みる、破天荒な名エッセイ、待望の文庫化!

~談春さんは 談志さんが残した最高傑作~
――ビートたけし

17歳で天才落語家・立川談志に入門。
両親の反対により新聞配達をしながら、「上の者が白いと云えば黒いもんでも白い」世界での落語家前座修業が始まる。
三日遅れの弟弟子は半年で廃業。なぜか築地市場で修業を命じられ、一門の新年会では兄弟子たちがトランプ博打を開帳し、談志のお供でハワイに行けばオネーサンに追いかけられる……。
様々なドタバタ、試練を乗り越え、談春は仲間とともに二ツ目昇進を目指す!
テレビドラマ『下町ロケット』(TBS系)などで俳優としても活躍、「今、最もチケットの取れない落語家」の異名を持つ立川談春のオリジンがここに!

<2008年講談社エッセイ賞受賞作品>

 

普通に紹介するとこの本は、立川談志に弟子入りした若者が、二ツ目を経てやがて真打になるまでの成長記である。

談志という人は、ただでさえ始末に終えないような難物で、付き合いにくいだろうなと思わせるアクの強さを持っている。それが師匠と弟子という関係なら尚更で、予想のつかない無茶苦茶な行動をするかと思うと、急に理にかなったことを言い出す。

逆説に手足が生えたような矛盾の塊であり、そのくせ筋の通ったことならいつでも認める理論家でもあるという厄介な人物なので、大勢の弟子が振り回されてヒーヒー言わされる様子は実に面白い。

その上、日本一のうるさい師匠が、同時に世界一落語にうるさい、そして我侭で揺れ続けている無茶な客でもあるというのが難しいところである。しかも「弟子」としては絶対にしてはいけないレベルのことを実際にやってきた人ですらある。

 

  「前座の間はな、どうやったら俺が喜ぶか、それだけ考えてろ。患うほど、気を遣え。お前は俺に惚れて落語家になったんだろう。本気で惚れてる相手なら死ぬ気で尽くせ。サシでつきあって相手を喜ばせられないような奴が何百人という客を満足させられるわけがねェだろう」

 

この「患うほど、気を遣え」というフレーズは、営業のみならず接客業全般に通じる教えでもある。

談志という「世界一難しいお客様」を満足させるための学びと挫折、という角度から読めば、本書は大抵のビジネス書よりも多くのことを教えてくれる。

 

「いいか、落語を語るのに必要なのはリズムとメロディだ。」

 

という談志ならではの鋭い断言は、そのまま営業トークに当てはめることができるかどうかは別としても、何らかのヒントか手がかりにはなる。

 

「よく芸は盗むものだと云うがあれは嘘だ。盗む方にもキャリアが必要なんだ。最初は俺が教えた通り覚えればいい。盗めるようになりゃ一人前だ。時間がかかるんだ。教える方に論理が無いからそういういいかげんなことを言うんだ。」

 

これもまた同様に、大抵の営業指南や研修には「教える側に論理が無い」。

論理もなく、経験もなく、知識もなく、技術もなく、話術もなく、哲学もないが、それでも何故か教壇に立っている先生やらコンサルタントやらが世界のあちこちにいる。

 

五代目柳家小さん NHK落語選集

五代目柳家小さん NHK落語選集

 

 

最終章における、師匠(客)が何を求めているか、弟子はそれをいかに察して提出できたか、或いはできなかったのか、という複雑なニュアンスを読み取るためには多少の予備知識が必要になるので、本書だけではやや不十分である。

 

しかし、それを深く理解するために談志と小さんの関係を別の本(たとえば新潮文庫の「人生、成り行き―談志一代記」)で読み、さらに小さんの落語を聴き始めるというのもそう悪くない入り方ではないかと思う。営業マンには落語家のような口跡の良さも必要なので。

 
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