幼年時代の私の愛読書は「オバケのQ太郎 傑作選」であった。
「よりぬきサザエさん」と並んで、ひたすら繰り返し読んだ記憶がある。
オバケのQ太郎 傑作選 全6巻完結 (てんとう虫コミックス) [マーケットプレイス コミックセット]
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やがて「オバケのQ太郎」は諸事情により絶版となり、その後は藤子不二雄ランド版や全集版への復活を経て、
新編集 オバケのQ太郎 全20巻(中公コミックス 藤子不二雄ランド) [マーケットプレイス コミックセット]
- 作者: 藤子不二雄
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ついに、庶民の手に届きやすい新装版てんとう虫コミックス(全12巻)の発売となった。
『オバケのQ太郎』全12巻 てんとう虫コミックスで登場!|小学館
そういう訳で最近の愛読書は、数十年の時を経て再び「オバケのQ太郎」になっている。
2015年の今、大人の目でこの作品を読んでみると、後年の完成品としての「ドラえもん」「キテレツ大百科」などに到る手前の試作品、試行錯誤の過程のようで興味深い。
時間的な距離感で言うと、マイルス・デイビスやボブ・ディランの未発表音源やレコーディング・セッションの記録がドバッと出て、そこで初めて完成品の前の段階を知るような感覚に似ている。宇宙へ行く話も、海を行く話も、地下に住居がある話も、どれもこれもデモテープのような荒削り感があって、粗雑な所がかえって楽しい。
今回は、大人の目で読み返して発見したことを一つだけ挙げておくことにする。それは第一話「Qちゃん誕生」に何度も出てくる「いいたかないけどめんどうみたよ」という台詞で、当時から何やら意味ありげには見えるのだが、何を意味しているのか今ひとつ飲み込めなかったのであった。
つい最近になって、やっと思い当たったのがクレイジーキャッツの「めんどうみたヨ」である。
調べてみると、シングル「 学生節・めんどうみたヨ」の発売は1963年12月20日で、半世紀以上も前の年末である。
一方、「オバケのQ太郎」の初回が掲載された「週刊少年サンデー」は、
無事タイトルも決まり、スタジオ・ゼロの財務を支えるスタジオ・ゼロ雑誌部の仕事として、スタジオ所属のメンバーが手伝い、『週刊少年サンデー』誌上で1964年にスタートした(1964年6号からスタート。同号発売が1月22日、誌面クレジットの発行日は2月2日)が、読者の反応がまったくなく、連載は9回でいったん終了した。
(wikipediaより)
1964年の1月22日発売だという。
よって、タイミング的には完全に一致する。
おそらく第一話を描いていた藤子不二雄の耳にも、第一話をリアルタイムで読んでいた子供たちの耳にも、この曲は注釈の必要がないほどごく自然に入っていたのだろう。
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つまり「オバケのQ太郎」の時代は、同時にクレイジーキャッツの時代でもあったのだ(第一話以外でも、Qちゃんが「見ろよ青い空 白い雲」と言ったりする)。
と、当時を知る人にとっては当然の事実にやっと気がついたのであった。