「岸辺露伴は動かない」を読んで感じた奇妙な点 ベスト10

 

 

「ジョジョの奇妙な冒険」の評価が高いと知ってはいるものの、いかんせん巻数が多過ぎて、

「今さら、どんなタイミングでどんな顔をして一巻を読んでいいのか分からない」

というお悩みを持っている方々が、国内外に推定数百万人くらいはいるであろう。

私は以前、床屋で数時間待たされた時に一部と二部を読んだ気がする。しかし内容はほぼ忘れてしまっていた。

最近、たまたま外伝的な短編集「岸辺露伴は動かない」を読んだので、本シリーズに詳しい人にもそうでない初心者にも楽しんでいただけるように、紹介と感想を兼ねて変だな、奇妙だなと思った点をベストテン形式で挙げてみたい。

 

岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス)

岸辺露伴は動かない (ジャンプコミックス)

 

 

第十位!収録作の順番が変!

 

本短編集は岸辺露伴という漫画家(表紙の絵の人)が様々な出来事に遭遇するという冒険談集である。

最初に「#16」があって、その後で「#02」「#05」「#06」、その後に「岸辺露伴グッチへ行く」という短篇が収録されている。

この順番がそもそも奇妙である。どちらかというと華やかな小品「グッチ」は冒頭に置くべきで、短篇の額縁の中に一人の人間の人生が嵌めこまれている「#16」は、むしろ最後に置くべき重さと長さと完成度の高さを持っている。

それなら実際に執筆された順番に沿っているのかというと、それとも異なっており、どういう意図でこの順番になったのか不明である。

 

 

第九位!ポップコーンを投げる!

 

冒頭のエピソード16「懺悔室」では、ある人物が別の人物から恨まれたために、命を賭けた賭け事を受け入れる羽目になる。それは「街灯よりも高く投げたポップコーンを口で受け止める」という賭けで、しかも続けて三回成功させなければならない。

読んでいる最中は「ゴゴゴゴゴゴゴ」「うおおおおおおおおおおおおお」「バシュウウウウ~ッ」といった書き文字や台詞の効果に丸め込まれて不思議に思わなかったが、それほど高く投げられるものだろうか?

 

 

第八位!岸辺露伴の頭の周囲のイナズマ型の赤くてギザギザしたもの!

 

表紙の絵にも描いてある、あのイナズマ型の赤くてギザギザしたものは何か、最後までよく分からなかった。これは本編の方で何か説明がありそうだが、本作のみではわからない。

 

 

第七位!「富豪村」の編集者が泉京香!

 

エピソード5「富豪村」は、どことなく泉鏡花の「高野聖」風の骨格を持った山中異界タイプの話である。

 

高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫)

高野聖・眉かくしの霊 (岩波文庫)

 

 

「泉京香」という名前の女性編集者が出てくるので、おそらく作者も意識しているらしい。

しかし、これが鏡花本人とも、鏡花の世界に出てくる女性像とも全くかけ離れたどうしようもない女で、コメントでは「この女性に対し、ムカつきながら描きました」とある。

それでいて作者自ら「キャラとしては大好きで傑作の出来と自負します」と断言している変な存在なのであった。

 

 

第六位!準備体操が必要か?

 

エピソード5の「富豪村」、続く6の「密漁海岸」、いずれも冒頭に岸辺露伴が体操をする様子が描かれている。なぜこの人は体操をしているのか、よく読むと分からない。

「富豪村」では「漫画を描く前の準備体操おわり」と言った直後に、別の場所に場面が変わるし、「密漁海岸」でも体操をした後にレストランで食事をするので、ほとんど体操のページは不必要なのである。

「準備体操をした後のページは、作中の岸辺露伴自身が描いた漫画です」という意味の描写に見えなくもないが、それにしては余りにも地続きな印象を受ける。

ちなみに「懺悔室」「六壁坂」「グッチ」にはこの体操は出てこない。

 

 

第五位!ボヨヨン岬!

 

「密漁海岸」には地図を表した駒が二回出てくる。この地図に「ボヨヨン岬」という場所が二回とも出てくるので、何かの伏線かと思ったら全く関係なかった。

 (↑追記:後で第四部を読んだら、ちゃんと由来が書いてあった)

 

 

第四位!目がシワシワになる!

 

「六壁坂」では誰かが死にそうになると、目がシワシワになるという描写が二回出てくる。

これは「死ぬ寸前から本格的な死へと移行する様子の描写」として何となくありそうだが、それにしても「シワシワ」という擬音語だか擬態語だか分からないような効果音があって、かなり変である。

 

 

第三位!「懺悔室」の解説が変!

 

各エピソードの終わりに作者自身の解説コメントがついている。

 

 1997年。編集部から短編執筆の依頼があり、条件は45ページ以内で、『スピンオフ・外伝は絶対禁止』。ドジャーン。スピンオフ作品ができちゃいました(笑)。

 

まったく論理性に乏しい文章で、一文目→「ドジャーン」という効果音→三文目へと至る流れが超絶技巧としか言いようのない変な文である。

 

 

第二位!心構えが変!

 

「六壁坂」の解説より。

 

 短編に臨む時の心構えは、いつの時代も「青春とはホラー」。これが目指す心構えだ。

 

「青春とはホラー」という力強い断言に引き込まれて、一瞬はサラリと読めてしまう。しかし、そんな定義は承服しがたい。

「青春とは甘く切ないもの」「青春とは幻影である」「青春とは恋の季節」なら同意できるが、仮に穴埋め問題であったら「青春とはホラー」と即答できる人は荒木先生の他に誰がいるだろうか。

 

 

第一位!「は」を繰り返すのが変!

 

「密漁海岸」の解説より。

 

露伴は現代社会のルールの境界は、より大切なもののために越えていくかもしれない。

 

何だこりゃ~と言いたくなる。ちょっと頭の弱い高校生が書いているブログのような文章である。

「は」の繰り返しを避けるために、「を」を使ってみてはどうか。

 

露伴は現代社会のルールの境界、より大切なもののために越えていくかもしれない。

 

という訳であれこれと変な点はあるのだが、当方の認識不足もあるかもしれないし、漫画としては充分すぎるほど面白かったので、感想としては「聞きしに勝る大変な作品の片鱗を垣間見た」といった印象である。

そのうちに、本編も三部あたりから読んでみたい。

 

 

追記:叶恭子さん、美香さん姉妹もジョジョに反応しているようだ。