プレゼントしたい本

 

 

今週のお題「プレゼントしたい本」

自分が誰かに「本をプレゼントする」という行為に及ぶ可能性は「ゼロです!」と思い込んでいたのだが、最近はそうでもなくなってきた。

考えを改めるに至った理由は、まず本以外の物品は迅速かつ露骨に金額に変換されてしまうからである。

プレゼントに毛布を贈る、お菓子の詰め合わせを贈る、セーターを贈る、アクセサリーを贈る、おもちゃを贈る、など何でもいいが、それらを貰う側の立場になって考えてみてほしい。

貰った次の瞬間には、すかさずそれを「数千円レベル」なのか「数万円レベル」なのか、はたまた「十万円以上レベル」なのか、瞬時に見抜いて返戻すべきおよその金額や相場について考えてはいないだろうか。

本の場合は、数万円以上の本をプレゼントする可能性は低いし、金額はせいぜい数千円以下で済むので、貰った側も精神的な負担が少なくて済む。

また昔なら本をプレゼントされた場合「絶対に読んで感想を言わねばならない」という義務や圧力が少なからずあったようだが、それも少なくなってきているので、読んでも読まなくてもほぼ自由である。贈る側も贈られる側も、今ほどお気軽に本をプレゼントできる時代はないのではないか。

 

二番目の理由としては、本の処分に困っているので、いわば厄介払い的な面と「本をプレゼントする」という行為がマッチしているからである。

先日もたまたま若い人と漫画の話になって、「ジョジョ」って知ってます?と訊かれた。

私はつい最近まで、総集編で第四部を読んでいたのである。相手はいま第一部から順に読み始めて第三部あたりまで来ているというので「捨てるのも何なので、よかったら今度あげますよ」「やったー!」という流れになった。

 

 

このケースはブックオフで少々の金額に換金するよりも、ずっと世のため人のためになっている。まさしくWin-Winの関係である。

 

三番目としては、やはり「この本に書いてある内容は、この人の役に立つだろうな」と感じるケースが今でもあるからで、最近でも十歳年下の甥には「断片的なものの社会学」、シングルマザーで「これからも意欲的にあれこれやっていきたい」と張り切っている知人には「仕事は楽しいかね?」をプレゼントした。

 

断片的なものの社会学

断片的なものの社会学

 

 

★紀伊國屋じんぶん大賞2016受賞!
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一生に一度はこういう本を書いてみたいと感じるような書でした。――星野智幸さん

この本は、奇妙な「外部」に読者を連れていく。
大冒険ではない。奇妙に断片的なシーンの集まりとしての社会。一瞬きらめく違和感。
それらを映画的につないでいく著者の編集技術には、ズルさを感じもする。美しすぎる。 ――千葉雅也さん

これはまず第一に、無類に面白い書物である。(…)
語る人たちに、共感ではなく理解をベースにひたすら寄り添おうとするスタンスは、
著者が本物の「社会学者」であることを端的に伝えている。─―佐々木敦さん(北海道新聞)

読み進めてすぐに、作者の物事と出来事の捉え方に、すっかり魅せられた。――唯川恵さん(読売新聞)

社会は、断片が断片のまま尊重されるほど複雑でうつくしい輝きを放つと
教わった。─―平松洋子さん(東京人)

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「この本は何も教えてはくれない。
ただ深く豊かに惑うだけだ。
そしてずっと、黙ってそばにいてくれる。
小石や犬のように。
私はこの本を必要としている」――星野智幸さん
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どんな人でもいろいろな「語り」をその内側に持っていて、その平凡さや普通さ、その「何事もなさ」に触れるだけで、胸をかきむしられるような気持ちになる。
梅田の繁華街ですれちがう厖大な数の人びとが、それぞれに「何事もない、普通の」物語を生きている。

小石も、ブログも、犬の死も、すぐに私の解釈や理解をすり抜けてしまう。それらはただそこにある。[…]
社会学者としては失格かもしれないが、いつかそうした「分析できないもの」ばかりを集めた本を書きたいと思っていた。(本文より)

 

 

仕事は楽しいかね?

仕事は楽しいかね?

 

 

   出張の帰りに、大雪のため一昼夜空港のロビーに足止めされた「私」。そこで出会ったある老人に、つい仕事で鬱積(うっせき)した感情をぶつけてしまう。老人は実は、企業トップがアドバイスをほしがるほどの高名な実業家。その含蓄ある言葉に「私」はしだいに仕事観を揺さぶられていく。

   本書は、将来への希望もなく日々仕事に追われる主人公が、老人のアドバイスに自己変革のアイデアを見いだしていく物語である。

それは、唐突に繰り出される老人の言葉とそれを問いただす「私」の会話で展開していく。たとえば老人は「目標を立てるな」という。「私」は、目標がなければ進歩の度合いが測れず、軌道修正もできないと反論する。

しかし老人は、斬新なアイデアや商品がなぜ誕生したかを説き明かし、それらが目前の課題に集中した結果であることを指摘。また、世の中は自分が目標を達成するまで待ってはくれないとも言う。そして「遊び感覚でいろいろやって、成り行きを見守る」「明日は今日と違う自分になる、だよ」などのアドバイスをおくる。

   試すこと、日々変化が必要であること、偶然を見落としていること…。本書のこうしたメッセージは特別なものではないが、それを痛切に感じさせる語り口が独特である。「多くの人は他人を凌駕する人材になろうとしているけど、それを他人と同じような人間になることで達成しようとしている」などは、自分を振り返らせるのに十分である。

   物語仕立てのビジネス啓発書としては「短編」の部類に入る本書。シンプルながら味わいのある1冊である。(棚上 勉)

 

誰に、どういう内容の本を、いつどのようなタイミングでプレゼントをするか?はよくよく見極めないといけないし、そしてそれは面倒くさいことでもある。

ただ、普段からよく話をするような相手なら、そう大変なことでもないし、今後はもっと気楽に本をプレゼントしてもよいと最近では思っている。

今後プレゼントしたい本としては、新婚さんに結婚祝いで山本周五郎の「さぶ」はどうか。

 

さぶ (新潮文庫)

さぶ (新潮文庫)

 

 

山本周五郎長篇小説全集 第三巻 さぶ

山本周五郎長篇小説全集 第三巻 さぶ

 

 

内容的には是非おすすめしたいが、相手によってはかなり厳しいかもしれないし、うまくいけば感謝されるかもしれないが難度は高めである。

 

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