「プリティ・リーグ」

 

 

女子野球が題材の映画だが、何を隠そう本作は「野球」を描くことにはさほど興味がないという珍品なのであった。

では何を描いているかというと、野球以外の要素にばかり労力を費やしている。姉と妹、世相、戦争、人種差別、そして時代の推移、等々が織り成すドラマを描きたがっているのだ。

これに比べると「スラムダンク」はバスケを知らない人にもバスケの魅力がわかるように描かれていたし、「スウィングガールズ」は少なくとも動機やモチベーションについて、説得力のある段取りが描かれた上で、最後には皆の心が一つになるという流れがあった。

しかしこの映画の主人公チームはワールドシリーズに出場して、最後の決戦に到るまでの説明が「新聞の見出し」→「新聞の見出し」→「新聞の見出し」→「新聞の見出し」という手抜き描写なのである。それ以前も「何となく才能がありました」「何となく合格しました」「何となく勝ってしまいました」というだけなのであった。

 

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監督やその他の選手も描写が足りない気がする。元有名打者で、今はアル中の監督はここぞという場面で見事な采配を揮うかというと、特にそういうことはない。マドンナはなぜ女優の仕事をする気になって、何をしに出てきたのかよく分からないが、ちょっと過去のある女を演じてお終いになる。強打者の引っ込み思案の選手は最初だけ印象的だったのだが、結婚して途中で戦線離脱する。

もうちょい全体を延ばして、1話50分×12話くらいのドラマにするべき内容ではないだろうか。トーナメント戦にして、8、9、10話の準決勝くらいに実質的なピークが来るべき話である。

準々決勝あたりから調子を落とした主人公がスランプで打てなくなって、さらに相手チームの変化球投手や敬遠策にも悩まされる。妹とは仲が悪くなって、夫は戦争から戻らない。いよいよもうダメか、という大ピンチの場面で「もう負けだよ!」と腐る選手たち。最低最悪の状況で曇り空になって、雨もポツポツ降ってくる。

監督「忘れちゃいないか?俺たちのチームには、もう一人の強打者がいるってことを……」

選手たち「?」

ここで満を持して、結婚していなくなったあの娘が戻ってくるのだ。「こんなこともあろうかと思って、選手登録は残しておいたのさ」と、監督が言えば辻褄が合う。このひと言さえあれば、アル中の監督だって顔が立つのだ。マドンナが伝書鳩でも飛ばして、引き戻したことにでもすればもっと辻褄が合う。