「男はつらいよ 寅次郎と殿様」

 

 

先日ひどい映画を観てしまったので、心の汚れをぬぐい取るような狙いで「男はつらいよ 寅次郎と殿様」を観た。

 

 

このシリーズを観たのは久々だが、70年代の寅さんはやはり何度観てもいい!

毎度毎度のお約束を律儀に守って、かつちょっと彩りを添えるゲストとマドンナがいて、始まったかと思ったら中盤になっていて、少しずつ早かったり遅かったりするタイミングで物事が進行して、例によって例の如くといった結末を迎える。

今回は嵐寛寿郎が殿様の役、執事が三木のり平、マドンナが真野響子という安定の一作であった。

 


男はつらいよ 寅次郎と殿様 HDリマスター版(第19作)

 

観客に期待をさせて、期待通りのものを与えるという流れが大小さまざまな場面に散りばめられていて、全体の構成も惚れ惚れするほどいつものリズムでいつもの通り。やがてこれがマンネリとして批判されて、ほとんど「つまらない映画の代名詞」のような扱いにすらなるのは、必然とはいえ残念である。

何かしら新味は出さなければならないし、出しすぎても引っ込みすぎても駄目、となるのは人気シリーズの抱える宿命とはいえ、80年代いっぱいくらいで終わらせるという可能性はなかったのだろうか。しかし、いま無責任な立場からシリーズ最終話の筋書きを考えてもよい手が思いつかない。ほぼ永久に解けないクイズのようなものだ。

昨今はこういうお約束的な流れ、構成を持った作品が少なくなった気がするのだが、東急リバブルのCMはちょっとそういう味わいを出している。

 


東急リバブル 売買仲介事業ブランドCM「娘との帰り道篇」(字幕版/30秒Ver)

 

何かちょっとした豆知識をお父さんが披露して、前振りとして子供の「そうなの?」を繰り返しておいて、最後は「知ってる!」で落とす。このわざとらしく、図々しく、コミカルで、周到で、微笑ましく、安定した感じ。これこそ「男はつらいよ」のミニチュア30秒版である。このCMの面白さを90分に拡大して美女を出したのが全盛期の寅さん映画ですよと、若い人には教えてあげたい。


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