「ダンケルク」

 

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台詞が無声映画の字幕並みに少なく、音楽も感情を盛り立てないように常に抑えられていて、その辺のありふれた戦争映画とはかなり異なる感触だった。

しかも、陸・海・空それぞれの立場から、それぞれ一週間・一日・一時間を圧縮しながら並列的に語られるという特異な構成(しかし、さほど不自然ではない)の106分である。

ドラマ性も見方によっては単調で希薄だが、静かなサスペンスがずっと消えることなくチビチビと、ヒタヒタと、チョロチョロと続いているので好みとしては大変よい。虚仮脅しのない緊張感というか。

 

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英仏軍はナチスドイツに押されていて、フランス(ダンケルク)から海を渡ってさっさと本国に撤退することすらできずに四十万もの兵士が海岸にいるという状況からスタートする。

で、迎えの船がやっと来ても、鈴なりになって出発したらいきなりUボートの魚雷やら戦闘機の空爆やらに邪魔されて、ほとんど手も足も出ない。「ダンケルク撤退作戦」というより「ダンケルクで包囲されて、踏んだり蹴ったり皆殺しになったり」なだけである。

やられる時のタイミングが微妙な唐突さを持っていて、ほんの僅かだが他の戦争映画の爆撃や命中のタイミングとはズレている感じがする。

 


映画『ダンケルク』予告1【HD】2017年9月9日(土)公開

 

で最後は宮沢賢治の「オツベルと象」みたいな感じになってお終い。目立った英雄もおらず大勝利もなく、興奮させる戦闘場面も人間味あふれるドラマもほとんどないので、カタルシスには乏しい。ただそういう人は「ハクソー・リッジ」とか「フューリー」を観ればいいのでは、と思う程度には戦争映画に飽き気味だったので、自分としては良作だった。

全体に青み、灰色がかった色調なのでキタノ・ブルーや北野映画の寡黙さが好きな人にはお勧めできる。もしこの映画が北野武監督作だったら、もっともっと世間は騒ぐ筈である。


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