創作

ところてん光線

こんな夢を見た。 月の出ている夜、大学の研究室にいると、唐突に弟が来た。 今の自分には弟の姿が見える。 面白がるかと思って、研究中のボックスを見せてやった。 まっ黒で細長いボックスの一端に、丸い穴が開いている。 この穴に、懐中電灯の先だけを入れ…

イヒヒ姫とニタ郎

こんな夢を見た。 自分は江戸時代の城にいる子守り役である。 城には殿様の娘がいる。 「いち」という名前だが、時々、妙な節をつけて「イ~ッヒッヒ」と笑うため、いち姫ではなくイヒヒ姫と呼ばれている。 無口な弟の方は始終ニタニタしており、ニタ郎と呼…

下降する意識

こんな夢を見た。 ある日を境にして、しゃっくりに悩まされる人が増えた。日本だけでなく、世界各地でしゃっくりをする人々が増える一方になった。 「原因はヒック、何だ、ヒック、ろう」「新しい種類の、ヒック、病気かしら」 この現象が世界中に広まると、…

心臓

こんな夢を見た。 広い草地に、原始人の自分がぼんやりと立っている。肩から獣の皮を掛けて、目的も欲望も何もない。 そこへ友人らしき人物が来て、驚いたような顔をする。顔といっても現実にいる友人の顔ではなく、抽象的な、漠然とした存在である。「お前…

ゴールドフィンガー

こんな夢を見た。 自分は小学4年生である。数年に一度は転居するので、日本のあちこちの小学校を渡り歩いている。どの小学校にいてもその時だけの関係なので、友情を育む暇がない。 たまたま今は同じクラスに、やはり転校を繰り返している友達のKがいた。 …

黒影の消息

こんな夢を見た。 「あ奴だけは許せぬ」「地獄の底まで追ってやる」 皆、黒影の件となると本心から怒る。 思い出して怒る。 寡黙な者さえ、腸が焦げるほど怒る。 ただひと言、「殺す」 目を血走らせてポツリと漏らす。 別のある者は時返しの術を使い、黒影を…

オネーギンによる鉛筆の教え

こんな夢を見た。 オネーギン、というのは姉のことである。 幼い頃からそう呼んでいるオネーギンが、色鉛筆を三十本ほど机に用意している。「この鉛筆を折ってみなさいよ」「いやだよ、もったいないじゃないか」自分は拒否する。「三本の矢じゃあるまいし」…

籠の鳥

こんな夢を見た。 自分はごく平凡な平侍である。 ある夜、忍者を捕えたとの報が城内をめぐった。 滅多にないことで、心が騒ぐ。 ところがその忍者を目にした誰もが、戻ってくると顔色を失っている。「どんな奴だ」「何とも……」「少しくらい教えてくれ」「………

8月なのに1月

こんな夢を見た。 自分が、日本有数の進学校の体育教師にされている。 いつも半袖のポロシャツを着て、下はジャージで、首から笛をぶら下げている。 共学の私立校で、およそ半数近くは女子生徒である。男女いずれも体育という科目や体育教師を馬鹿にしている…

こんな夢を見た。 物心ついた頃から、自分は特別な扱いを受けている。「ら桃かま生れ桃じ郎た太ゃ」「たず村の子ち供っよ力り、とが強ゃい子じ」 お爺さんとお婆さんの話はわかりづらいが、何となく伝わってくるものがある。村人も子供らも同じように話すの…

双子の仲直り

まだ若かった両親と、生まれたばかりの私の三人家族が建て売り住宅に住み始めたその日に、隣の家にもイギリスから白人の夫婦が越してきた。そして、ほとんど私と誕生日が一緒の双子の姉妹を伴っていた。 すぐ隣に同じ年齢の姉妹が住んでいて、ちょくちょく行…

野球から二塁が消えた理由

世の中ってのは、理屈が通っていて「こっちの方がいい」と皆が自然に思ったら、投票なんかしなくても必ずそうなるものなんだ。世の中は理屈で動く。 うん。もう随分と昔のことだからな。そりゃ見たことだってあるよ。そうそう、当時の野球の「塁」ってのは、…

しりとりの練習をする少年【朗読編】

「よし、じゃあ松山、立ってこの詩を音読してみるように」 「……あ、はい……(……に、に、人魚姫!)」 「詩っていうのは心に響くように、心をこめて読むんだぞ?」 「はいっ!(……ぞ、ぞ、ゾンビ!) ……。 カムチャッカの若者が……(……が、がんもどき!) きり…

しりとりの練習をする男

「なあ松山、ちょっと話があるんだけど……」 「……(……ど?……ど、……どら焼き!)」 「今、いいかな?」 「あ、はい……(な……、夏休み!)」 「忙しかったらいいんだけど」 「いや、大丈夫です……(おいおい、また「ど」で攻めてきたか……、土曜日!)」 「昨日、…

クラリネット君とゆかいな仲間たち

僕はクラリネットです。 皆さんにお友達を紹介しますね。 カラリネット君は、カラリと晴れた空のようなさわやかな性格です。 キラリネット君は、キラリと光るものを持っています。 ケラリネット君は、ケラケラとよく笑います。 コラリネット君は、毎日のよう…

思い出に残る留学生たち

パキスタンからの留学生が「日本の文化を広めたい」と面接で宣言して入社した先は日本文化センターであった。テレビショッピングの会社である。チリからの留学生は「日本の芸術を深く学び、広めたい」と考えて来日し、卒業後はアート引越センターに入社した…

文章の先生

二十年前の春のこと、ひげを生やした大柄な男が森の奥に居つくようになった。たった一人で小屋を建てているらしいという噂が村に広がった。 やがて五月になると小屋の形が整い、六月にはその「誰か」が若い医者だとわかった。彼の住まいはその小屋で、診察室…

びっくりガムの効果

妹が、夏休みの最後の日に「びっくりガム」というおかしを発明しました。 「おねえちゃん。これ作ったから、かんでみて」 もらって食べてみると、ふつうのミントの味がしました。 「あたしも今から、かんでみるからね」 と妹がいいました。 「どんな色になっ…

節目

幼い頃、余の家族は毎年の夏を田舎の親戚宅で過ごしたものだ。 古びた家屋の天井には巨大な節目があった。ある晩、節目の総大将のようなそれと目が合ったような気がした。文字通りの「目」として、じっとこちらの様子を伺っているように思えてならない。布団…

何とかかんとかの世界

ダン!とテーブルを叩いて、息子が何とかかんとかした。「お父さんは僕のことを、何とかかんとかとして扱って、いつも絶対に何とかかんとかじゃないか!」 姉も大きな声で、何とかかんとかする。「そうよ、お父さんはいつだって何とかかんとかのことなんか、…

「ね」が好きな女の子

普段からさりげなく、めがねを「ねがね」、歴史を「ねきし」と言っている。 幼い頃から歴史好きで、なぜかというとひたすら固有名詞が出てくるからである。「とくがわいえやす」と発音しなければならない時には、さりげなく「とくがわいねやす」と言っている…

クの子供たち

まだ幼いクの子供たちが整列し、行進していると、 クククククク々ククク 何やら一人だけ、毛色の違う子が混じっていた。 ク「おい、お前だけなんだかヨタヨタしていて、動きが鈍いぞ!ククク……」 々「引きずってしまうんだよ。この、下の方のストッパーが邪…

コロンブスの帰還

アメリカ大陸を発見したとされるコロンブス自身は、かの地をインドだと思い込んでいた。その上、帰り道がまったくわからなかった。 そして実は、船の向きが逆になっただけで北も南もわからなくなるほどの方向音痴で、かなりの重症であった。 ごまかすにして…

「滑稽と悲惨に満ちた『つ』の遍歴と修行時代」

アルファベットの「J」がひらがなの「つ」になるという話を7月に書いた。 その後、どうなったかというと……。

「蟻」

今週のお題が「ちょっとコワい話」になっていた。

「カクヨムレビューを10回以上書いた方の自信作」で「一番のお気に入り」に!

「カクヨムレビューを10回以上書いた方の自信作」という企画で、暫定的な入賞作品5作のうち「一番のお気に入り」として拙作「節目」を選んでいただきました!

Jの悲劇

アルファベットは、紀元前の北セム文字が起源とされている。 「I」の元になった記号の存在は早い段階から確認されているが、「J」はかなり後になってから「I」から派生して成立した。両者が厳密に区別されるようになったのは、ようやく14世紀以降のことで…

文章の先生

「カクヨム」にある小説を読んでいるうちに自分でも書きたくなってきて「文章の先生」という、原稿用紙4枚くらいの短い小説を書いてみた。

何でも日記:「黒みつ」はスーパーの売り場のどこにあるか

「黒みつ」はスーパーの売り場のどこにあるか。 これは簡単そうで難しい問題なのであった。