「濁点・半濁点なし文」は私の生み出したオリジナルのアイディアかというと、全くそのようなことはない。
前回の「復活編」の書き方だとそのように見えてしまう面も少なからずあるので、自分にわかる範囲でこのアイディアの由来について整理してみたい。
このような表記に興味を感じた最初のきっかけは、三十年ほど前に創元推理文庫「ポオ小説全集４」収録の「不条理の天使」を読んだことである。
この中に出てくる「不条理の天使」の喋り方が、以下のようになっている。
「君は一体何者だ？」とぼくは毅然として尋ねたけれども、実はだいぶ動転していた。「どうやってこの家に入ったんだ？それに、一体何の話をしているんだ？」
「とうやって入ろうと」と怪物は言った。「お前の知ったことてはない。それに、何の話たろうと、俺は自分のしゃぺりたいことをしゃぺるのたよ。それから、俺か何者かということは、それをわからせてやるためにわさわさこうして姿を見せているてはないか」
この部分に関しては「濁点なし」で、一部「濁点を半濁点にする」というルールで翻訳されている。
この小説の訳し方については、複数の国の言語、翻訳家の訳文の比較をしているブログがあるので、参考にどうぞ。
翻訳みほん帖 The Angel of the Odd by Edgar Allan Poe エドガー・アラン・ポー 「奇妙さの天使」「不条理の天使」「奇態な天使」
原文では、本来「is」とするべき所が「iz」、「about」が「apout 」になっていたりする。
つまり「アバウト」を「アパウト」と発音しているような、特殊でたどたどしい英語を日本語に訳す際に「しゃべる」を「しゃぺる」と訳しているので、素人目にも「原文の感覚を正確に伝えている訳」とはこういうことかと思えるほど論理的で正確な訳になっている。
それなら、ポオのこの小説を訳した翻訳家が編み出したオリジナルのアイディアかというと、そうも言えないようで、元来、日本語には濁点、半濁点そのものがあったりなかったりするのである。
詳しくは「濁点 半濁点 歴史」で検索してみると幾らでも情報が出てくるので割愛するが、日本史全体から見れば「濁点・半濁点あり」がノーマルである時期というのは意外にごく最近の短い期間に過ぎないらしい。
さらに言うと、自分は十年以上前に２ちゃんねるの「お笑い小咄板」で、
「バーバパパ→ハーハハハ」
という書き込みをした記憶があったので少し調べてみたのだが、オリジナリティどころか単語レベルで、
「濁点・半濁点なし」
にする作業を行う遊びは、いま現在も２ちゃんねる全体で「ほぼ常時」と言えるほど活発に行われている。
2014-09-01 23:13 ニュース速報(VIP) 濁点を取ると弱そうに見えるものって多いよな！（96）
2014-08-30 04:14 ニュース速報(VIP) 濁点抜くと弱くなるよな（53）
2014-08-28 17:14 地下アイドル（AKB48） メンのあだ名に濁点を付けるとモンスターぽくなる（98）
2014-08-21 20:01 ニュース速報(VIP) ロボットの名前から濁点を取るとすごく弱そう（105）
2014-08-20 15:58 新シャア専用 濁点の無いモビルスーツ名のヘナチョコ感www（5）
2014-08-05 08:00 ニュース速報(VIP) 濁点抜きで煽りまくるスレ（18）
2014-08-05 07:53 ロビー 濁点を抜いて煽りまくるスレ（4）
2014-07-27 19:38 プロレス 濁点を抜いてみる（21）
2014-07-27 11:12 ニュース速報(VIP) 怪獣の名前から濁点とると弱そうに聞こえる（18）
2014-07-14 19:30 お笑い小咄 濁点、半濁点かえると台無し（7）
2014-07-10 12:38 ニュース速報(VIP) ひらがなのみ、濁点禁止で会話すると意味わからなくなるらしい（158）
2014-07-01 13:58 ニュース速報(VIP) 時々濁点か無い奴いるしゃん あれなんなの？（7）
2014-06-19 18:39 ニュース速報(VIP) 「濁点付いてないのに強そうな名前」を思い浮かべてください（138）
2014-05-02 03:49 ニュース速報(VIP) 昔って濁点とか付けなかったんだよな？（4）
ただ私は「弱そうに見える」とか「何となくおかしい」の他にも色々な効用や可能性が「濁点・半濁点なし文」にはあると思っているので、その辺りの考えも近いうちに書いてみたい。
今日の濁点なし単語：おじょうさん→おしょうさん
