今週のお題「我が家のご馳走」
今では山崎豊子というとすぐ「社会派」ということになるが、初期は大阪商人を描いた「船場もの」を多く書いていたという。
この映画の原作「ぼんち」はその「船場もの」の一作である。
異世界を舞台にしたファンタジーが「何となく中世ヨーロッパ風」なだけで、さほど異世界という感じを受けなかったりするものだが、この映画の大阪は大商家特有の「妾を持つのが当たり前」という世界なので、自分のいる世界と地続きの異世界という感じがある。
遠いようで近く、近いようで遠い世界とでもいったところか。
映画はとにかく女優陣が豪華、かつ一人一人が濃厚な存在感を放っている。
市川雷蔵の演じる若旦那の周囲を衛星のように飛びまわる、
中村玉緒(可憐)!
若尾文子(どーん)!
草笛光子(儚げ)!
越路吹雪(たくましい)!
そして、
京マチ子(どどーん)!!
月並みだが、
目のご馳走
と言いたくなる。
私がリアルタイムで市川崑の映画を知ったのは「細雪」あたりからだが、どうもあれは間延びしているような、色つきの照明の場面など変てこな印象を受けたものだった。
「ぼんち」の頃は才気煥発、テキパキしたテンポのよい語り口と、重さと軽妙さ、ユーモアと悲しさがうまく同居していて見応えがあった。
こういう日本映画なら毎日でも観たいと思うほど。
五点満点で考えるなら☆四つである。