普段の生活においては、車を運転したり、映画を観たりしている状態でも「だいたい十五分経った」「およそ三十分過ぎた」「いま一時間くらい」という時間の感覚は維持できているものである。
ところが先日「オール・ユー・ニード・イズ・キル」を観ていて、時間の感じ方が少し狂うような感覚があったので、そのことについて書いてみたい。
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この映画では、主人公がある特定の時点から何度も同じ時間を繰り返すことになる。
せいぜい1日に満たない程度の時間をループするのだが、次第に映画的な省略によって「映画内での数時間=現実では数秒の場面」と圧縮されて表現されるようになる。
それが何度も何度も繰り返されるうちに、自分のいる現実の時間に置き換え難くなってきて「この映画が始まってから何分経ったか」を計る時計が麻痺したようになるのである。そのため、特に前半は文字通り「時の経つのを忘れる」ような奇妙な感覚が味わえる。
この映画の場合は「映画内時間(長い)」と「表現された時間(短い)」というギャップがあるので説明が可能だが、他に時間の感覚を忘れてしまうのが私の場合は将棋で、真剣に考えていると現実で数分経ったのか数十分経ったのか、全くわからなくなることが時々ある。
また、どういう訳か山本周五郎の小説だけは、フッと時間の意識が消えるほど引き込まれたことが何度かあった。