俳句の本のうち「作り方(詠み方)」指南の本が割と多くある。
この本は発想別に多くの句が100通りに分類されているが、分析や解説は少ない。
ひとつのテーマに関する文が2,3行あって、例句が数作あって、一句につき1~3行のコメント風の言葉が添えられているという構成になっている。
「強引に断定する」「失敗を詠む」「視線を移す」「匂いをかぎとる」などはよくありそうだが「死後を詠む」「幻を詠む」「動物と一体化する」「絵画のイメージを借りる」といった特殊な視点のテーマまで出てくるので、発想法の本というよりは「発想別のアンソロジー」と説明した方が事実に近い。
いわゆる鑑賞文は退屈で難しいから読みたくない、という人にはコンパクトで良い本かもしれない。私は最初あまりこの本の評価は高くできないと思っていたのだが、たとえば月に二百句詠むことをノルマにしている人が行き詰まった時などには、かなり役に立つ本になる筈である。
つまり、実際に俳句を詠む人にとってはかなり有益な虎の巻で、読み物として俳句の本を探している人にとってはごく普通レベルのアンソロジーといった評価になるのではないか。
私は今、後者から前者にシフトしつつあるので、もう少し時間をかけてこの本と付き合うべきかもしれないと思っている。よってお勧め度は平凡に☆3つ程度である。
他にひとつ発見があって、それは「蜂の巣マシンガン」を扱った回で少し触れた、
祭あと市電がへんなもの撥ねる
という句にそっくりな句があったのである。
早乙女わらびという人の句で、
へんなもの踏んづけてゐる夏祭
「曖昧に詠む」というテーマで例に挙げられている(P.112)。
この手のそっくりな俳句が、偶然の一致なのかそうでないのか、あるいは他の理由によるものか、という話題は別の本でもつい最近読んだので、次回はその辺りに触れてみたい。