pちゃんの敵で「魔王」ともいうべき最凶の存在、それはカラスである。
遠くでカラスが「カア」と鳴くだけで、pちゃんの心の中で炎が燃え上がるらしい。
姿が見えている時は、さらに大きな声で怒ったように吠える。
カラス:カア!
pちゃん:ワン!
カラス:カア、カア!
pちゃん:ワン!ワン!
カラス:カア、カア、カア~!
pちゃん:ワン、ワン、ワオーン!
という風に、きちんと罵り合いが成立している。
一旦、pちゃんの心の中で「吠えたい」という欲望が動き出すと、空気抵抗や摩擦がないままズンズン進んで行って、次第にねずみ花火のようにクルクル回りながら飛び跳ねて、やがてはpちゃん自身にも訳が分からなくなって、収拾がつかなくなるようだ。
困るのは、すっかりカラスの姿が見えなくなって、声もしない状態になってもまだ吠えたがる点で、何もない方向に向かって同じ調子でずっと吠えている。
「引っ込みがつかなくなっている」という風にも見える。
かと思うと、その反対もある。
夜、急に吠え始めるので何かと思っていると、しばらく経ってから救急車のサイレンが近づいてきて、近所を通り過ぎて去って行ったりするのである。
こういう時は夜中でも「遠くのサイレンに気づいて偉いね~、pちゃん!」と褒めてやりたくなるが、すぐにピタッと吠えるのをやめてまた眠るので、カラスと救急車の区別は一応ついているらしい。