トピック「新入社員」について
「新社会人や新入社員に向けたエントリーが、続々と投稿されています。」と旬のトピックコーナーに書いてあったので、幾つか関連する記事を読んでみた。
そこで急に思い出したのが以下の文章である。
私は以前から現在にいたるまで、自分の個人的アイデンティティの実感をもったことがありません。私というものは、何かが起きる場所のように私自身には思えますが、「私が」どうするとか「私を」こうするとかいうことはありません。私たちの各自が、ものごとの起こる交叉点のようなものです。交叉点とはまったく受身の性質のもので、何かがそこに起こるだけです。ほかの場所では別のことが起こりますが、それも同じように有効です。選択はできません。まったく偶然の問題です。
文化人類学者クロード・レヴィ=ストロースの著書「神話と意味」の冒頭にある文章だが、おそらく新社会人の目には寝言かお経か、無意味に哲学ぶった妄言のようにしか見えないのではないだろうか。その気持ちが分かる程度には、私もかつて若かった。
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しかし、新社会人になってから二十年以上が過ぎた現在、この言葉は単なる真理としか言いようのないほどの真理である。
ちなみに「何もかもが偶然だから全く意味がない」と言っている訳ではないし「仕事や生きることに価値がない」と皮肉を言っている訳でもない。
偶然ちょっと思い出した良い言葉だから書いておいてあげようと考えただけのことで、むしろ親切に近い。