「凶悪」は、凶悪な事件の真相を追う記者の方に、いつの間にか「悪」そのものが乗り移ってしまったかのような、割とよくあるといえばよくある、まるで「リング」のごとくリレーされてしまったような図を描く話だった。
音楽がほとんど無い点がよく、無音で観客の目に映る普通の風景の荒れた感じ、例えば空き地や林や、アパートや電気店や焼却炉などの汚く醜い様子もよい。
若者も老人も、加害者も被害者も、犯罪に関わった人間はみな荒れており汚く醜い。時間の前後する構成が、かえって分かりやすかった。
山田孝之はコマーシャルでしか知らなかったが、顔も体つきも声も隅から隅まで端正で、古風な和服や刀が似合う人なのではないかと思った。「用心棒」の頃の三船のような活躍の場があればいいのだが、いま現在あまり時代劇映画の需要がないのかもしれない(たまに「話題作!」といって騒いでいるのも、何となくマスコミが話題にしたがって、させたがっているだけ)。
その代わり、ツイッターに活躍の場を求めているのかもしれない。この人の回答はみな冴えていて、本人でないのではとも言われている。