「永い言い訳」

フィクションはみな「鎮魂」なのだという考え方を何かで読んだことがある。この映画の主人公には内的にも外的にも様々な障壁があって、その「鎮魂」ができない状態に置かれている。

だからやることなすことが皆「永い言い訳」になってしまう。その様子は同情すべき気の毒さと滑稽さを持っていて、本人もどこか不安定で不穏なままで、やや落ち着いたかと思うとまたバランスを壊されてしまう。何度もその繰り返しである。

 

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前半の3分の1くらいはギクシャクしていたが、その後じわじわと、西川美和のかもし出す、いつもの濃厚で独特の苦味が広がって、曖昧さにすらピントがよく合っているので物足りない後味にはならず、この世界に包み込まれるようだった。

 

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