よく言えば王道、悪く言えばベタなゾンビ物なので、安心して観ていられる。
しかし一概にベタといっても様々な要素があるので、ちょっと思いつくままに書いてみると、
1.主人公は単独では行動できないため、グループを作るか入るかする。
2.グループには老若男女がバランスよくおり(少人数の場合は性別が均等)、移動のたびに離散し最集合を繰り返す。
3.それぞれに守るべき者、有形無形の大切な物があり、それが行動や目的を決定する(たとえば父親にとっては娘が大切など)。
4.子供や妊婦といった弱者がしばしば足を引っ張り、その代わりに絶妙のタイミングで突破口を開き、活躍する。
5.役に立ちそうな、重要そうな人物は捨て駒のごとく簡単に死ぬ。絶望ムードを増し、主人公の選択肢を減らすためである。
6.副主人公的な人物は戦闘能力が高く、判断力が高い。そのため、本当に駄目な時はすぐに察して、自己犠牲的な死を迎える。
7.ゲス役の人物は他人の命より自分の都合を優先し、その代償に悲惨な死を迎える。
8.ゲス役は余裕があれば嘘の情報を流したり、変な方向へ扇動を試みる。
9.ゲス役の達成すべき重要項目は「本当に恐ろしいのはゾンビではない、人間なのだ」と観客に思わせること。
10.ゲス役の反対で、理想や人間性を大切にする温和な人物の運命は、ゾンビ化するか自己犠牲的に死ぬか、その両方か、三択である(有名な俳優の場合は三番目)。
11.長い物語の場合は、平和な頃をしのばせるエピソードや物が出てくる(意外な職業に就いていた人の過去や、古いオルゴール、記念写真など)。
12.犠牲は多かったが大切な者(あるいは物)を守りきった、となればハッピーな部類の結末である。
13.バッドエンドの場合は大切な者(あるいは物)を失った上、狂乱・破滅・絶望のみで終了。
……などなど(このブログを読んでいるあなたも、3項目くらい書き加えてみよう)。
ただ本作は列車内という閉鎖空間で逃げたり戦ったりで、位置関係がわかりやすい点が良い。位置関係や距離や方向がメッチャよくわかる映画はおおむね良作である。全体的にテンポがよく、降りたりまた乗ったりで、飽きる間がない。
真相を伏せての大本営発表、というのもゾンビ物のお約束だが「暴力デモ」扱いになるのがちょっと新鮮だった。