「万引き家族」

 

 

そういえば先月は「万引き家族」を観たのでその感想も書いておく。

このタイトルを知ったのはかなり前になるが、最初はキャッチーな題に沿った喜劇的な話になるものとばかり思っていた。しかし先行上映で観たという人の話によると、「観ていた時はよく意味がわからなかったけど、翌日になってから感動した」という、わかるようなわからないような、実に気になるものだったのでますます期待を高めてしまった。

 

万引き家族【映画小説化作品】

万引き家族【映画小説化作品】

 

 

で、実際に観てみると確かにタイトルの通り「万引き家族」の話ではあるものの「仮の家族」「真の家族」「ゆらぐ家族」「偽りの家族」「◎◎によって繋がれている家族」の話でもあって、コミカルな要素は少ない。しかし安直な分類ができないほど、濃密で意外な関係性や場面が多く見ごたえがあった。

 


映画「万引き家族」本予告編

 

この映画はよく「安藤サクラがすごい!」と言われるが、私の場合やけに印象的だったのはクリーニング店の同僚の女性と一つの椅子を争うことになる口論の場面で、あのやりとりの最後の方で出てくる「殺す」という台詞はかなりドスがきいていた。

真正面から人物をとらえると、いかにも西部劇の対決場面風に作り物っぽくなってしまうか、何となくの小津映画風、といった空気が出てしまうものだが、あの場面は後々になって事情が判明してくると余計に恐ろしさが増してくる。

 

万引き家族「オリジナル・サウンドトラック」

万引き家族「オリジナル・サウンドトラック」

 

 

そういえば「カリオストロの城」の終盤でも「指輪は渡すからその子は自由にしてやれ」という会話があって、その取引の内容と言い、最後の「殺す」と言い、正面からの絵と言い、実によく似ている(と後から気づいた)。

映画が終わって、スタッフロールが流れてきても誰も席を立たず、自分も立つ気にならず、とうとう全部が終ってからやっと観客が歩き始めた(自分も)という経験をしてしまったが、これはもしかすると人生で初めてかもしれない。自分にとっても翌日や翌々日まで、あれこれと尾を引く映画だった。

 

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