ここ一ヶ月ほどで、音楽の聴き方はSpotifyほぼ一本に絞られて、本もKindleでの購入が増えてきた。
つまり、平成ぎりぎり最後の時期に、平成元年から二十九年まで親しんできた方法に別れを告げつつある。
ちょっとした節目なので、今どのような状態なのかメモしておくと、まずSpotifyは無料版を使いすぎて「あんたはあと一時間で、もう今月の分は終了だよ!」という通知が来てしまった。
なぜそれほど時間を消費したのかというと、自分用のプレイリストを何種類も作っていたからである。
Sweet William、小島麻由美、Nona Reeves、椎名林檎、Lamp、クレイジーケンバンド、PUNPEE、ユーミン、YMO、ビートルズなどは過去のアルバムの曲のうち、ほぼ全てを聴けるので、そこからセレクトしてミュージシャン別に作ってみた。他にはエラ・フィッツジェラルド、マイケル・ジャクソン、作曲家別で筒美京平、バート・バカラックも作った(ただしほとんど音源がないミュージシャンも結構いて、サザン、山下達郎、大瀧詠一、aikoなど)。
プレイリストを作っていると、あっという間に時間が過ぎていくし、無料版は何を聴くにしても強制的に曲順がシャッフルされてしまうところが不便だったので、月額980円の有料版に変更した。
毎月一枚980円のCDを購入して、そこに4000万曲分のデータが入っているものと考えれば嘘のような安い値段である。
しかしひと口に4000万曲あるといっても、そのうち3990万曲くらいはどこの誰だか分からないような、どうでもいいミュージシャンのどうでもいい曲のような気がする。その3990万曲の再生数を全部足しても、マイケル・ジャクソンの半分にも満たないのではないだろうか。
しかしまあ、とにかく安い。安すぎてミュージシャンが気の毒になってくるほどである。
次は書籍に関していうと、今のところノンフィクションの単行本や小説のたぐいはまだスマホで読むスタイルに慣れていない。Kindle版が必ずあるかというとそうでもないし、タブレットは重いので、活字はまだまだ電子書籍を買い、読む習慣がついていない。
たとえば菊地成孔は分厚い本が多し、文章も構成も電子書籍に向いているように思うのだが、今のところチラホラとしかKindleでは買えない。
ただし漫画は「無料版」「おためし版」で200冊くらいは読んだ。
「もともと漫画は綺麗な紙に綺麗な線で描いているものを、質悪なザラ紙に印刷しているのはおかしい」
という意見を何かで読んで以来、確かにタブレット型端末で読んだ方が、作品の受け止め方として正しいのではないか、原稿サイズの大型ディスプレイや拡大機能つきで読むのが正解なのではないか、という考えが頭から離れなくなった。
映画やテレビ番組は何かにつけてハイビジョンだの何Kで観るだの大型画面の迫力だの、受信機能をあれこれアピールしてくるが、実際に多く観られているのは下らないバラエティ番組やハリウッド映画ばかりである。それなら漫画も同じような主張のもと、綺麗な画像で大きく見るのが当たり前という時代が来ても不思議ではない。

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とは言うものの、実際に自分が今日読了したのは「邦画プレゼン女子高生 邦キチ!映子さん」の2巻である。
「何となく1巻を読んだ記憶はあるが、2巻はいつ出たんだろう?」
と思って、スマホを操作しているうちに誤って購入してしまったのである。
しかし内容は面白い。
誰がどう考えても「邦画よりは洋画」「変な実写版よりは原作の方がずっと面白いに決まっている」という常識を逆手に取って、主人公の映子さんが実写版の「ルパン三世」「進撃の巨人」「魔女の宅急便」などを熱烈に推してくるのだ。
当初、主人公の映子はちょっと頭の弱い子にしか見えないのだが、読み進むにつれて、次第にこの子の熱意が可愛らしく思えてきて、そのうち何をどうプレゼンされても不思議ではないという、妙な慣れあい感に浸ることができる。
いちいちツッコミを入れる役の、先輩の男の子が気の毒になってくるほどである。

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2巻の後半ではキムタクの「SPACE BATTLESHIP ヤマト」、「幻の湖」といった、いわば邦画駄作界における横綱級の作品が登場するのだが、にもかかわらず熱烈に「面白い作品」として推してこられると、もうこちらの理性が麻痺してきて、
「なぜこれを“つまらない”と判断できるのだろうか?」
と自分に問いかけたくなってくる。
通常「ダメな作品」をどう持ち上げたところで、微妙な嫌味や皮肉が発生してしまって当然なはずが、なぜかこの漫画は全体に70年代の少女向けギャグ漫画風のテイストになっていて、話し方も主人公は「~でありまする」、中国人キャラは「~アル」になっていて、その辺りでうまいこと毒気を中和している。
全体的に良い意味の軽さもあるので、いくら読んでも少しも疲れない。これから漫画を電子書籍で気軽に読もうという人には最初にお勧めしたい。