「ガーンジー島の読書会の秘密」の試写会に招待されたので行ってきた。
マスコミ関係者でもなく、人気ブロガーでもなく、映画評論家でもなく、知人が映画会社に勤めている訳でもないのに、招待されてタダで映画を鑑賞できる……、という状況は、子供の頃の自分にしてみれば夢のような話である。
しかし、大人の自分としては「仮につまらなかったとしても、酷評しづらい……」「といって嘘の大絶賛もしたくない……」と微妙な心理状態で鑑賞したのであった。
で、結論はどうかというと「ミステリー」のつもりで観るとちょっと肩すかしになってしまう。
というのはタイトルの通り「秘密」をめぐる話ではあるものの、何だかちょっとその辺が話の中心にはなっていないような展開なのだ。
何らかの秘密があるのであれば、ここはまず、
「頑なに口を閉ざす島の住民たち!」
に始まって、
「どうしても過去の出来事を記録に留めたいと考えた村の変人が書き残した、暗号日記を発見!」
「主人公がモタモタしている間に、とうとう関係者の一人が殺されてしまう!」
「猛烈に激しい嵐が島を襲い、外部との通信は不可能!」
「さらに第二、第三の犠牲者が!」
「とうとう主人公にも忍び寄る魔の手!」
「島に伝わる童謡の秘密とは?」
「そして、戦時下で起きたある出来事とは……?」
と、このくらいのてんこ盛りにしてくれてもいいのだが、
「質問したら、教えてくれちゃいましたヨ!」
といったノリで何もかもが分かってしまうのであった。
チラシや公式サイトでは「独創的なミステリー」「至福のミステリー」と書いてあるほど「ミステリー」色を強めにアピールしている割にはそこが薄味で、むしろ話が軌道修正されて、いつの間にか普通のラブロマンスに落ち着いている、という終わり方なのだった。
原作は書簡体小説のようなので、映画化に際してどのくらい脚色があったのかよく分からない。しかし「ミステリー」かどうかとなると、そもそも原作からしてそうではないっぽいようではある(タイトルに「の秘密」が付け足されているし)。
リリー・ジェームズの役柄としては「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」でチャーチルのタイピストだった彼女が、本作では第二次世界大戦後のイギリスの若い新進作家になっている。本作はあの話の続きの世界なのだ、と思い込めば思い込めなくもないし、そういう風に観た方が事態を理解しやすい(タイプを打つ姿も出てくる)。個人的には二、三年も経てば勝手に頭の中で混ざっていそうな感じなのであった。