「THE GUILTY/ギルティ」

 

 

1シチュエーションで最初から最後まで押し通すというので、公開当時から気になっていた「ギルティ」を観た。

電話からの声と音だけで誘拐事件を解決するという、シンプルながらも予測不可能な展開で注目され、第34回サンダンス映画祭で観客賞を受賞するなど話題を呼んだデンマーク製の異色サスペンス。

過去のある事件をきっかけに警察官として一線を退いたアスガーは、いまは緊急通報指令室のオペレーターとして、交通事故の搬送を遠隔手配するなど、電話越しに小さな事件に応対する日々を送っている。

そんなある日、アスガーは、今まさに誘拐されているという女性からの通報を受ける。

車の発進音や女性の声、そして犯人の息づかいなど、電話から聞こえるかすかな音だけを頼りに、アスガーは事件に対処しなければならず……。

 

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最初の15分くらいは主人公の顔と全身ばかりで、本当にこのまま観ていて大丈夫なのか、不安になるほどだった。

しかし!

女性からの電話が入って「どうやら誘拐されかけているらしい→乗っている車の色を聞き出そうとする」という辺りから異様なほど引き込まれて、自宅にいる〇〇との通話が始まると、もう脳裏に「絵」が浮かんで浮かんで浮かび続けて、止まらなくなる。

 

THE GUILTY ギルティ[Blu-ray]

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思うにこれは普段、小説を読みながら頭に「絵」を思い浮かべる訓練を積んでいる人であればあるほど入り込みやすくなる作品で、いわば小説型映画とでもいうべきものである。あるいは朗読劇やラジオドラマに近い映画と言ってもいい。

筋そのものは割と明快で、終始「いま何が問題になっているか」「いま主人公は何に困っているのか」「いま主人公のするべき行動(というか指示)は何か」がよく伝わってくる。そういう意味では黒澤映画のように骨太な印象すら受けるので、決して手法が特別な訳でも筋立てが斬新な訳でもなく、むしろ正統派のサスペンス映画である。