落語日記 16-20

 

 

昨日の続きで、可楽の「反魂香」を聴いた。

これもまた、べらんめえ口調の江戸っ子のそそっかしさ、図々しさ、はた迷惑な感じが絶品と言える。フランク永井が好んだという噺。

それから林家正蔵の「頭ヶ池」も聴いた。

枕の部分が意外と長く、雷と太陽と月が旅をしたとか、雷の親子が散歩して……、といった人間以外のものが出てくる小噺が多くて愉快だった。本編は大まかな筋も落ちも以前から知っていたので、特に発見はなし。


続いて林家正蔵の「蔵前駕籠」。

これは江戸から明治へと到る時代の雰囲気がよかった。駕籠かきの掛け声は落語ならではの臨場感があった。
普通は「エイ、ホ。エイ、ホ。」と声を出すものと思っていたが「エイ、ホ、カ~ゴ」と言っていた。


DVDで瀧川鯉昇という人の落語を2つ。

まず「時そば」。

これは有名な噺だ。しかしこの噺の眼目となるトリックはさほど面白いとは思えないので、退屈するだろうかと思っていたら枕が結構長かった。45分のうち25分は枕だったような感じ。

 

瀧川鯉昇1

瀧川鯉昇1

  • アーティスト:瀧川鯉昇
  • 発売日: 2005/11/25
  • メディア: CD
 
瀧川鯉昇2

瀧川鯉昇2

  • アーティスト:瀧川鯉昇
  • 発売日: 2007/06/25
  • メディア: CD
 

 


次に「宿屋の冨」。

これはある宿屋にメチャクチャ大金持ちが来るというのが出だしで、どのくらい金持ちかと言うと、

「金が邪魔なので、利息はとらないことにしている」

「自分の家が広すぎて、でもまあ一度くらいは一周したことがある」

「庭の真ん中に出っ張りがある。それを世間では富士山とか言っている」

「裏庭に行くのに馬と駕籠で8日くらいかかる」

「蔵に百万両の箱が積んであって、泥棒に自由に持って行けと命じたら、八十箱しか持って行かなかった」

 

などと金持ちぶりをこれでもかとばかりに言う、ここが一番面白かった。


そういう訳で今日とても良かったのは、林家正蔵の「頭ヶ池」の枕と、瀧川鯉昇の「宿屋の冨」の金持ち自慢のくだり。

 

 

・今日は文楽の「愛宕山」を聴いた。
これが今ひとつピンと来ない。
解説を見ると、この噺でリアリティを出すのは難しいそうで、桂文楽も長い間、客の前でやるのに抵抗感があったとのこと。
しかし実際に愛宕山に行って吹っ切れたそうだ。


・落語関係の本の感想を幾つか。

「恋寄席通い?人気落語家9人に大接近!」(読了)インタビュー集。

「寄席奇人伝」(読了)よい。ちくま文庫。

「刑務所通いはやめられない」(読了)ごく普通。

「江戸落語便利帳」これはおいおい読む予定。パラパラ見ただけで、林家正蔵が露伴の「幻談」をやっていたと知り興奮。

「落語の世界」(読了)よい。平凡社ライブラリー。

「本朝話人伝」(読了)よい。中公文庫。

 

・まだ読んでいない落語の本

「ファイティング寿限無」これは小説。読むのがしんどそう。

「遊動亭円木」これも小説。読むと退屈しそう。

「ご乱心」これはノンフィクション。分裂騒動の本で、何だか気が進まない。

 

・今日注文した本は、「落語通談」「落語の言語学」「落語芸談」。
いずれも送料340円で本体は1~300円程度。

 

 

・この2,3日は文楽の落語を聴く続きで、有名な「明烏」、それから「馬のす」「大仏餅」「按摩の炬燵」「穴泥」「夢の酒」「かんしゃく」「鰻の幇間」「愛宕山」などを聴いた。


・今日買った本など。

「権太楼の大落語論」柳家権太楼へのインタビューを中心とした本。
何事にも一家言ある人で、読んでいて夢中になった。しかしこの人の落語はまだ見ても聴いてもいない。

「師匠噺」浜美雪という、雑誌の落語特集などを手がけていた編集者による、師弟のつながりをテーマにした本。

 

落語 師匠噺 (講談社+α文庫)

落語 師匠噺 (講談社+α文庫)

  • 作者:浜 美雪
  • 発売日: 2015/05/21
  • メディア: 文庫
 

 

「落語ファン倶楽部 Vol.6(大ネタに関する特集)」読み応えがある。

 

落語ファン倶楽部 Vol.6 (CD付)

落語ファン倶楽部 Vol.6 (CD付)

  • 作者:笑芸人
  • 発売日: 2008/12/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

「落語大看板列伝」これも読み応えがある。
芸談は面白いし、写真やインタビューもいい。

 

落語 大看板列伝

落語 大看板列伝

 

 

それから談志の「最後の落語論」。
これも面白そう。

 

談志最後の落語論 (ちくま文庫)

談志最後の落語論 (ちくま文庫)

 

 

落語の本を沢山読んでいるうちに、急に「『いき』の構造」がすらすらと抵抗なく読めるようになっていた。


・「ちりとてちん」は第二週最後まで見たが、長いので大変だった。最後の母娘涙の別れはやや作為的で、かえって冷めてしまう。

 

「GEO(ゲオ)」というレンタルショップがあったので、落語はあるかどうかチェックしてみたところ、談志、快楽亭ブラック、その他のDVDが20枚ほどあったので、早速会員になって何枚か借りてきた。


まずは桂南喬という、先日高座で観た人のDVDで「粗忽長屋」。

この噺は、以前から知っていた。
あまりにもウッカリしているので、「お前が行き倒れになっている」と言われて信じ込み、最後はその死体を背負って「背負っている自分は一体誰なんだろう?」というもの。
最初のウッカリ者の例もまあまあ、特に新しい発見はなし。

そして小さんの「あくび指南」。
これも前から知っている噺だったので、特にこれといった発見はなし。

創作落語や談志のDVDを併せて借りてきたので、そちらに期待しよう。

 

 

人情の機微や日本人の習慣などを、落語にうまく取り入れ、
笑いながら、当時の風情も味わえる古典落語の名手、桂藤兵衛。

得意ネタの「そば清」に昔の娯楽の舞台裏がのぞける「武助馬」に
対談式のインタビューを収録。

 

と紹介されている[落語DVD] 「桂藤兵衛 落語 ~そば清・武助馬」を鑑賞してみた。

まず「そば清」は上方では「蛇含草」という噺で、中身が少し異なるようだ。

内容は前半の方がよかった。

「何だかすげえ量の蕎麦食ってる奴がいるぞ!」

「しらねェのか、あいつはそば清だ!」

というような。それで大食いの賭けをする。
後半の展開は知っているので、予定通りのコースを辿ったという印象だけ。

「武助馬」は「弟子は師の半芸にしかず」という言葉が出てくるということで興味を持って観たのだが、その言葉は出てこなかったか、聞きのがした。

全体的にもう一つパッとしないと言うか、今いち人気のない噺家さんは、こういうものなのだということがよく分かった。


次は創作落語にも積極的に取り組んでいるという林家彦いち「彦いち噺DVD 創~SOU~ 」というDVDの「熱血怪談部」という噺を観てみた。

この噺は、大人しくお喋りしていたいという高校の「怪談部」に、なぜか熱血教師が来てしまうという新作落語。これはさほど面白くなかった。

 

彦いち噺DVD 創~SOU~

彦いち噺DVD 創~SOU~

  • 発売日: 2007/07/20
  • メディア: DVD
 

 

しかし「つまんねえ!金返せ!」という気にはならず、「新作落語を作るのって大変だなあ、こりゃハードル高い世界だわな」という同情のような感想を持った。