サスペンスやスリラー系ではどういう映画がお好きですか?
という質問を受けて考えてみた。しかし好きなものをあれこれ考えると、およそ30作くらいはすぐに頭に浮かぶ。
しかもジャンル的に正真正銘の「スリラー映画!」「これぞサスペンス!」というものは意外と少ない。
外見は「ミステリ」とか「ゾンビもの」とか「パニックもの」とか、「スパイ映画」「アクション映画」なんていう区分けがされていて、その作品ごとに「スリラー」「サスペンス」要素があるので。
それにしてもこの種の映画をとりわけ好むのはなぜなのか? と考えてみると、おそらく12歳くらいの頃にテレビの映画番組で「ジョーズ」「ゴッドファーザー」を観たあたりの経験から始まっているのではと思う。
なので、いわゆる「サスペンス」「スリラー」とは呼ばれないが、知らない方はまず基礎として「ジョーズ」「ゴッドファーザー」は観ておいてほしい。すごく基本的でベタだが、それ以上に古びない面白さがある。
では、とりあえず絞りに絞った10選をどうぞ。
「バニー・レークは行方不明」
イギリスの古い白黒映画で「隠れた傑作」という触れ込みだった。
これが期待した以上の内容で、できればあまり事前に情報を入れない方がいい。
「ミッドサマー」
サスペンスやスリラー系の映画が好きな人に神様が贈ってくれたような作品で、シンプルに「何をされるのか分からない」という怖さ。ホラー要素、グロ要素、ショッキング要素も入っている。
ある閉鎖的な集団の恐ろしさという点では「ゲット・アウト」をもっと美術的に飾ったような感じ。
「サンセット大通り」
スリル要素として「権力者に気に入られる」というパターンがあり、これはその典型。ビリー・ワイルダーというとコメディばかりが有名なので、見逃さないでほしい。
「ラストキング・オブ・スコットランド」
これも大変な権力者が出てきて、実に怖い。
やはり予備知識なしでこのヤバい感じに巻き込まれてほしい。
「3時10分、決断のとき」
白黒映画をリメイクした西部劇で、新しい方が良い。あまりに好きすぎて原作や旧作と比較してみたくらい。
近年の西部劇では「ジャンゴ」もいいし「荒野の誓い」もいいし、ずーっと昔のハワード・ホークスの「赤い河」「リオ・ブラボー」、ジョン・フォードの「リバティ・バランスを撃った男」もいい。
「ヒッチャー」
本作はこのジャンルの傑作中の傑作。
やはり事前に情報をなるべく入れずに、主人公と似た心情になってほしい。ニューリマスター版の公開時にある人が「97分間、一秒足りとも緊張感が途切れない。」とコメントしているほど。
「悪魔のような女」
フランスの古い映画で、クライマックスで思わず声をあげそうになった。
気の弱い方、心臓に持病がある方は本当に注意した方がいいです。
「暗くなるまで待って」
このジャンルはどうしてもヒッチコック映画を挙げざるを得ないが、ひとつには絞り切れないのでヒッチコックへのオマージュ的な映画として「シャレード」を勧めたい。
で、同じオードリー・ヘップバーン主演の「暗くなるまで待って」の方がさらにサスペンス性が高いので、入門的な意味でどちらもお勧め。あえてどちらかといえば「暗くなるまで~」。
「アイズ・ワイド・シャット」
キューブリックの遺作で、静かに美しくサスペンスが盛り上がる。トム・クルーズのどことなく愚かな雰囲気、ニコール・キッドマンの美しさ、そしてあの館の冷たい感じ……。
「歩いても歩いても」
是枝監督は「海街ダイアリー」「そして父になる」にもサスペンス性があり、「万引き家族」「三度目の殺人」には犯罪が絡んでいる。しかし!私がサスペンス性を強く感じたのは、なぜか「歩いても歩いても」。
別にどでかい犯罪や大きな謎やショッキングな場面はないのに、静かで不穏な感じがチラッチラッと、油断するとまたチラッと出てくる。
微妙に誰かと誰かの仲が悪いとか「この人は何を言い出すんだろう」とか「この人は誰なんだろう」といった興味、緊張感が散りばめられている。よその人が来ると女性の声色がちょっと変わるとか、そういう微妙なリアルさがいい。
惜しくも10選に漏れた作品については、後日。