観た映画:「コンボイ」☆

 

 

先日の「ゲッタウェイ」がビックリするほど面白かったので、同じペキンパー監督の「コンボイ」も観てみた。

序盤はトラック野郎たちが警官と揉める話で、大乱闘になる辺りまではよかった。

考えてみると今の日本映画の登場人物たちはほとんど警官を殴ったり、反抗したりしない。刑事に殴りかかるような奴は、もう絶対に逃げられない状況下で、せいぜい虚しい「最後の抵抗」といったお約束のアクションしかできない。

 

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また「ゲッタウェイ」と同じくアリ・マッグローが魅力的で、ショートカット好きには見逃せないところである。

中盤になるとトラック軍団が色々あって、幕末の「ええじゃないか」のようなムードが漂ってくる。観ている方も行け行けムードである。

さらに揉める度合いが高まるような事件が起きて、これはどこかで見たような展開だなと思っていたら宮沢賢治の「オツベルと象なのであった。

 

 ある晩、象は象小屋で、ふらふらたおれて地べたに座り、藁もたべずに、十一日の月を見て、
「もう、さようなら、サンタマリア。」と斯う言った。
「おや、何だって? さよならだ?」月がにわかに象にく。
「ええ、さよならです。サンタマリア。」
「何だい、なりばかり大きくて、からっきし意気地いくじのないやつだなあ。仲間へ手紙を書いたらいいや。」月がわらって斯う云った。
「お筆も紙もありませんよう。」象は細ういきれいな声で、しくしくしくしく泣き出した。
「そら、これでしょう。」すぐ眼の前で、可愛かあいい子どもの声がした。象が頭を上げて見ると、赤い着物の童子が立って、すずりと紙をささげていた。象は早速手紙を書いた。
「ぼくはずいぶん眼にあっている。みんなで出て来て助けてくれ。」
 童子はすぐに手紙をもって、林の方へあるいて行った。
 赤衣せきいの童子が、そうして山に着いたのは、ちょうどひるめしごろだった。このとき山の象どもは、沙羅樹さらじゅの下のくらがりで、などをやっていたのだが、額をあつめてこれを見た。
「ぼくはずいぶん眼にあっている。みんなで出てきて助けてくれ。」
 象は一せいに立ちあがり、まっ黒になってえだした。
「オツベルをやっつけよう」議長の象が高くさけぶと、
「おう、でかけよう。グララアガア、グララアガア。」みんながいちどに呼応する。
 さあ、もうみんな、あらしのように林の中をなきぬけて、グララアガア、グララアガア、野原の方へとんで行く。どいつもみんなきちがいだ。小さな木などは根こぎになり、やぶや何かもめちゃめちゃだ。グワア グワア グワア グワア、花火みたいに野原の中へ飛び出した。それから、何の、走って、走って、とうとう向うの青くかすんだ野原のはてに、オツベルのやしきの黄いろな屋根を見附みつけると、象はいちどに噴火ふんかした。
 グララアガア、グララアガア。その時はちょうど一時半、オツベルは皮の寝台しんだいの上でひるねのさかりで、からすゆめを見ていたもんだ。あまり大きな音なので、オツベルの家の百姓どもが、門から少し外へ出て、小手をかざして向うを見た。林のような象だろう。汽車より早くやってくる。さあ、まるっきり、血の気も失せてかけんで、
旦那だんなあ、象です。押し寄せやした。旦那あ、象です。」と声をかぎりに叫んだもんだ。

 

オツベルと象 (フォア文庫)

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本当にこの童話を映画化したのかと思うほどそっくりなのである。

ところがいよいよクライマックスになって、ホニャララがああいう風になった後で、いきなり何の説明もなく「実は◎◎だったよん!」という落ちなので、これは酷い。

さすがにこれは無いでしょうと思ってネットで他の人の感想を読もうとすると、

「キュートランスフォーマー 帰ってきたコンボイの謎

という関係のない作品の情報ばかり出てくる。おかげでトランスフォーマーチョロQやアプリについて詳しくなってしまった。「帰ってきたコンボイの謎: 伝説のムリゲーがアプリで登場!! アナタは理不尽なステージをクリアできるか!?」という記事など、元のゲームも今のアプリも関係ないのに読んでしまった。

という訳で、多少八つ当たり的だが思い切って☆ひとつという低評価である(最高は☆5つ)。

 

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