「これが欲しい!」と熱烈に思っていたものというと、トランシーバーとかラジコンをクリスマスに買ってもらった記憶があるのだが、手に入ってからはあまり遊んだ記憶がない。
無理に記憶をほじくり返して考えているうちに「多面体筆箱」を思い出した。
この記事↑のタイトルは「多面式筆箱」だが、自分の子供の頃は「三面体」「四面体」などと称していたように思う。
「競争が過熱すると、四面、五面と多面式筆箱も進化していきました。一番画期的だったのが、五面の多面式筆箱です。学校ではコンパクトな筆箱なのに、ランドセルに入れるときはバカッと開いて教科書と同じB5サイズになるんです。薄くて収納しやすくなります」
ノリはまさしくトランスフォーマー。その後も企業間で激しい開発競争が続いた多面式筆箱は、可動部分にも収納スペースを搭載し薄い形状に変形する先述の「五面」、さらに細かい収納スペースを搭載した「六面」「七面」……と多面化が進行。
開く箇所が多ければ多いほど数字が増えるので、最終的には「八面体」くらいまで行っていた(というか実際に持っていた)ように記憶する。当時は熱烈に欲しがったものだが、いま考えると立方体でもない癖に何が「体」なんだよと言いたい。この記事では最終的に「十一面体」までで開発が終ったとあるが、そりゃ終って当然である。
こういう筆箱を初めて見たという人は不思議に思うかもしれないが、ブームの渦中にいた自分にも何が魅力的で、なぜあれほど欲しかったのかが曖昧である。月並みな言い方をそのまま使って、夢でも見ていたような心境だとしか言いようがない。
むしろ「私も被害者なんですよ!」と叫びたいくらいである。こんなものを欲しがって、実際に買ってもらったという事実を過去に戻って消去したいし、当時の両親に宛てて詫び状でも書きたいくらい無意味で恥ずかしい欲望であった。