「疑惑」

 

 

「疑惑」は1982年の映画なので、自分が中学生くらいの頃かと思うと、当時の日本の様子の何もかもが懐かしい。

 

<あの頃映画> 疑惑 [DVD]

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「彼女が夫を殺したのは間違いない。」10人のうち10人までもが確信する鬼塚球磨子の有罪。だが心証的にはまっ黒でも、何一つ物的証拠がない。果たして検察は、世間は、彼女の罪を立証できるのか。そして、弁護側は―。暴行・傷害・恐喝・詐欺―前科4犯の毒婦と、女弁護士の心理的葛藤・かけひき・せめぎあい。

 

前科四犯、しかも今回さらに保険金殺人の夫殺しの容疑が濃厚という、誰がどう見てもまっ黒けな女が桃井かおりで、彼女を弁護するのが岩下志麻である。

冷酷そのものの極悪人と冷徹な弁護士が手を組んで、裁判が進むうちに奇妙な友情の一つも生まれるのが映画のお約束というものだが、最後の最後まで少しも仲良くならない。そこが良い。

 

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この二人はプライベートでも仲が良くなさそうだし、女が女に対して、面と向かって「嫌い」と言い合う姿が醜悪で美しく、腹の底からの本音を怒鳴り合い、罵り合う場面がクライマックスにあると実に嬉しい。拍手して、旗でも振りたくなってくる。

それ以外にも、冷たい弁護士が急に笑顔になって、帰宅途中の中学生をつかまえて懐柔するあたりがかなり怖い(その後は法廷に引きずり出して、誘導尋問して恫喝する)。山田五十鈴や三木のり平、森田健作や丹波哲郎など、配役が隅々まで豪華で退屈する暇がなかった。