「ジョン・ウィック:チャプター2」

「ジョン・ウィック2」は殺し屋を牛耳る組織を抜けようにも抜けられず、結局は周囲の誰もが目の色を変えて「あいつを殺れー!」とばかりに襲い掛かってくる中を、これまたスイスイと蹴散らしてゆく伝説的な殺し屋ジョン・ウィックを描いている。

殺し屋が主人公の映画において、普通は一般市民を巻き添えにしないようにコソコソと、警察にも見つからないようにひっそりと行動するものである。

つまり、

 

巻き添えにして殺してしまうかもしれない一般市民 < 殺し屋 < 警察

 

という順に弱さ~強さの序列ができている。

だが、このシリーズの場合は冒頭から警察のケの字も出てこない。あるいは出る間もないほどのハイスピードで、という意味かもしれないがいきなりのカーチェイスである。

 

ジョン・ウィック:チャプター2 [DVD]

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その後も一般市民が普通に歩いている通りや、駅の構内や、電車内などでビシビシ殺し合う。銃やナイフを出すことを躊躇しないのである。

昨今の映画だとこういう場面では「野次馬がスマホや携帯で写真を撮りたがる図」が出てきても不思議ではないのだが、殺し屋を牛耳っている組織「コンチネンタル」が巨大すぎて、一般市民どころか警察やマスコミなどは意のままに操っていそうな雰囲気だし、一般市民の中に多くの殺し屋が紛れ込んでもいるので、上記の序列が逆転してハチャメチャな状態になっている。

そうした一種のお祭り的な空間の中で「殺しに行ったらターゲットが静かに諦める」とか「鏡の間っぽいデジタルアート展示場で殺し合う」とか「ザコを蹴散らす場面を並行して描く」とか、ちょろちょろ新味を出してくるので、飽きる暇がないほど楽しい。

 


『ジョン・ウィック:チャプター2』“殺し屋の心得”特別映像

 

殺し屋組合の総本山のホテルがあって、そこは前作から「ここでは絶対に殺し合い禁止!」というルールになっているのだが、主人公と古い仲間が殺し合っている最中にそこに入ってしまい、仕方なく休戦状態になって酒を飲む場面などはコミカルですらあった。

で結局は「虎の穴」に狙われるタイガーマスクのような状態になって「続きは3を観てね!」と言わんばかりの終り方になる。次で終わるのかどうかは疑問だが、別の人が主役としてシリーズを継いで、たまにキアヌ・リーブスが出てくるという感じがいいのでは。