「刑事コロンボ」覚え書き6

 

 

コロンボの最初期の作品「殺人処方箋」を見た。

本格的なシリーズ制作を開始する前の第一作で、舞台劇が元になっているという。

明らかに腹の中で思っていることとセリフに食い違いがあり、圧力をかけてくる犯人と、それでものらりくらりとかわして、懐に入り込む老獪なキャラクター像が既に完成している。

会話のやりとりにしても、「うちのカミさん」「最後にもう一つだけ」といったセリフが最初からある。

コロンボによくある会話のやりとりは、以下のようなものである。

 

「はっはっは。君は僕のことを、真犯人だと疑っているんじゃないだろうね……(絶対にそういう目で見てるだろ! 消えろ、今すぐ消えてくれ!)」

「まさか、とんでもない。何とかさんは業界での地位もあり、名声も、財産も、そして幸せなご家庭も……、犯罪だなんて、まったく割に合いませんからねえ(お前以外、誰もいね~よ! 早く自白しろ、このボケナス!)」

「そうとも、第一、証拠というものがないのだからね。これからも何でも協力するよ、コロンボ君(もう顔も見たくねえ! 頼むから死ね死ね、死んでくれ!)」

「そうです、証拠がない。確かにないんです。けれどもどこか、引っかかるところがあるんですな……(今、調べてもらってるとこだよ! ジタバタすんなよ!)」

 

 

「引っかかる点? 君のような優秀な刑事さんが、引っかかる……? というと……(嫌味ったらしいから、嫌味で返してやったよ!)」

「ええ、この、普通は何らかの証拠、痕跡、不自然な点、……そういうのが見つかるものなんでね……、それがこの現場には何ひとつとして、見当たらないんで。これ以上はいくら調べたって、見つかりゃしませんや。でも、逆にあたしみたいなのにゃ、そこが引っかかるんです(嘘だよ、バレバレなんだよ! バーカ! バーカ!)」


そもそも、コロンボ的なスタイルの発想の元になったのは「罪と罰」だという。確かにこんな風に追究される場面があった。