入れ替え可能な短歌(茂吉編)

 

 

のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて 足乳根の母は死にたまふなり 

みちのくの母の命を一目見ん 一目みんとぞただにいそげり

 

今回は「赤光」の有名な二首を検討してみます。

 

のど赤き玄鳥ふたつ屋梁にゐて 一目みんとぞただにいそげり

 

「おい、校舎のあそこに燕がいるぞー!」

「しかも二匹だー!」

なんてことを小学校の休み時間に誰かが言ったら、そりゃ見に行くのが子供の心情というものです。

「うおー! 見に行け―!」

「とつげきー!」

「一目でいいから見たいよー!」

と、全力で疾走している子供らの姿が目に浮かびます。名歌といえましょう。

 

 

 

では、残った方の上の句と下の句はどうでしょうか。

 

みちのくの母の命を一目見ん 足乳根の母は死にたまふなり 

 

「みちのくの母」と「垂乳根の母」が何だか別人みたいですね。

きっと事情があって、別々の母親なんでしょうね。

死にかけている「みちのくの母」(こっちはおそらく育ての親)を一目だけ見た、するとその時、本当の生みの親である「垂乳根の母」の方はそれに呼応するように死んでしまった。

あたかも命を渡すようにして……、まさに命のリレーです。

感動的ですね。

そういう訳で今回もまた成立しているというか、その気になれば成立させてしまえる、という二首でした。