「刑事コロンボ」覚え書き6

コロンボの最初期の作品「殺人処方箋」を見た。

本格的なシリーズ制作を開始する前の第一作で、舞台劇が元になっているという。

明らかに腹の中で思っていることとセリフに食い違いがあり、圧力をかけてくる犯人と、それでものらりくらりとかわして、懐に入り込む老獪なキャラクター像が既に完成している。

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「刑事コロンボ」覚え書き4

悪や、その原因となるエゴや傲慢、無知、愚かさに対して「憎い」と感じさせるのは比較的たやすい。

たとえば、冷酷な犯罪を描くことで「ひどい」「むごい」「残虐だ」と感じさせて「憎い」と思わせるような。

しかし、悪や愚かさに対して「憐れみ」まで感じさせるのは手間がかかり、難しい。そこまで行って初めて「悪を通じて人間を描いた」ことになるように思う。

 

 

たとえば「鬼滅の刃」でも「悪=愚かさ=憐れみ」と感じさせる流れはあるが、よく似た悲劇が多いのでやや単調に感じられる。ただしその欠点を補うように「正義も悪も似たようなもの(似たような境遇から正義にも悪にもなり得る)」「正反対のようだが、紙一重で表裏一体」という主張が出てくるので、成功している。

コロンボの場合は社会的な地位の高い、輝くばかりの成功者が次第にその姿を小さくする過程を描いており、最後には卑小な、憐れむべき小人物、気の毒な俗物として見えてくる。それは人間が描けているからだろう。