「ビー・クール」

 

 

「ゲット・ショーティ」の続編が「ビー・クール」で、またもやジョン・トラボルタ演じるチリが活躍する。いきなり「続編」についての会話から始まり、しかも今度はパートナーがユマ・サーマンなので、誰もが「パルプ・フィクション」を連想する上、二人で踊るシーンまであるという、いかにも「自覚してます……」という続編ぶりと二番煎じぶりである。

前作の「映画好き」という設定を残しつつも今度は音楽業界のサクセス・ストーリーが中心になって、またしても白人系のチンピラ、黒人系のギャング、ロシアンマフィアが三つ巴、四つ巴になって争うことになる。前作は大金の流れが二つあって、置き場所には空港のコインロッカーが使われたのに対して、今回のお宝は金の卵の歌手の契約書、そして質屋がポイントになる。

 

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似たパターンの繰り返しは他にもあって「いつの間にか自宅やオフィスに誰かがいる」という、最初に主人公がやった登場の仕方をあっちこっちで繰り返す。これが一種のお約束のようで楽しく、かつリズムを生むので、「またかよ」と思いつつも楽しめる。

右も左も悪者だらけの中に、若い頃のザ・ロックことドウェイン・ジョンソンがいて、今はこのように、

 

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↑スキのない格好いい役が多いのに対して、本作では頭の弱い、ゲイで俳優志望の用心棒というコミカルな役を演じている。それで何をやっても主人公に都合のいいようにいなされて、「モノローグ」の意味もわかっていなくて、手駒のように上手いこと使われてしまう(でも最後には上手くいく)。もう一人、「ワンピース」のドフラミンゴとプレスリ-を合わせたような奴がいて、このコンビのパートはほとんど楽しい。

で結局、金の卵のサクセスストーリーの方は、ちょっとホイホイと進みすぎるのでやや物足りない。「エアロスミスと競演!キャー!」という山場があっても、エアロスミスのことを何とも思っていない自分には今ひとつ乗り切れない。

それにしても世界中にエアロスミスのファンが何百万人もいて(確か松たか子も大ファンだったと記憶する)、にもかかわらず本当に何ともピンと来ない曲と演奏で、どちらかというとリヴ・タイラーに出てきてほしいなどと考えているうちに、これは日本に置き換えてリメイクすれば相当に面白い話になるように思えてきた。

「歌手の契約書をめぐって、インディーズのレコード会社とヤクザとが対立する」というだけなら少しもスリルがない、「午後のロードショー」にふさわしい、典型的な洋画のクライムコメディといった趣だが、「権利書」「芸能プロダクション」「インディーズレコード会社」「多国籍ヤクザ」「暗殺」「人種差別」「大物グループとの競演」といった要素に今の日本の様々な要素を当てはめていくと、当てはめ方次第ではかなり生々しい話になるためである。

今の日本では……、とあれこれ考えてみると、本当に真顔でやばいと言いたくなるほどのやばい話題である。「矢作俊彦原作、北野武監督で映画化!」みたいなテイストに修正して、頭の中で配役を考えながら観ると暇つぶしに大変よい。