私の場合、ジョン・トラボルタって「何だかよくわからない人だな」という印象しか持っていないので、あまり期待しないで観たのだが……。
とても面白くて、自分の好みに合っていたのねん!
で、そもそもは主人公のジョン・トラボルタ演じる「チリ」というチンピラみたいな男が借金の取立てをする、という発端なので、今ひとつ話に勢いがない。
しかし映画製作に携わる男の家にいつの間にか侵入して、それも単なる泥棒に近い登場の仕方なのだが「こんな映画の案があるぜ!」という話でジーン・ハックマンと意気投合してしまうあたりから妙な可笑しさが出てきて、そのままその調子で最後まで行くのであった。
この「主人公が映画好き」という設定も、最初は何だかはっきりしなくて、人に取り入るためのチンピラ流の出まかせではないかと思ってしまった。しかしオーソン・ウェルズの「黒い罠」を映画館で観ている場面のあたりから「この人は本当に映画が好きで、映画の話をしている!」と感じられるようになる。
終盤のかなり緊迫した場面でも「リオ・ブラボー」についてペラペラ喋って、「酔いどれ役を演じる役者は変わっても、ジョン・ウェインは常にジョン・ウェインを演じている」なんて言っているのだ。
この本気なのか嘘なのかわからないような、ルパン三世やコブラのようなトボケぶりがスマートで、しかも常に強くて、常に軽く、常に動じない点が魅力なのだが、それが伝わってくるまでに少々時間がかかるところが欠点といえそうである。
批判する人にとってこの映画は、単にダラダラした、メリハリのない映画に見えてしまうらしい。しかし「映画についての映画」という側面もあるため、見かけと違って浅いようで奥が深いのであった。