「死刑執行人もまた死す」はタイトルが印象的なので、いつか観たいと思っていた映画だった。
「ハイドリヒを撃て」がナチスの非情さを鋭く、残酷に、しかもリアルに描きすぎていたので「チェコの人たちは何も考えてなかったのか?」という印象が残ってしまったが、時系列的にあの続きのような状況(ハイドリヒ暗殺後、犯人が逃亡中)から始まるので、このタイミングで観てよかった。
知らずに観たとはいえ、時間を越えて時間が繋がったような、この変な感じは味わい深い。
「ハイドリヒを撃て」は2016年の映画で、1942年の出来事を描く(主に暗殺前)。
「死刑執行人もまた死す」は1943年の映画で、1942年の出来事を描く(主に暗殺後)。
そして本作では、チェコの人々の抵抗が描かれるので、やっとモヤモヤしたやり場のない気持ちが清算された。
スリルやサスペンスだけでなく、ユーモアもあるし、敵も味方も見事な推理を披露する場面があるので、エンタメとしても優れている。ミステリ的な側面として失踪人探し、アリバイ崩し、法廷物の要素もあり、物的証拠品の行方がどうなるかといった手で興味を引くこともある。
単に「ナチス=極悪」「チェコ=すべて善」という訳でもない、微妙な「善の暴走」といった面も描かれており、古さを感じさせない。敵の中に味方がいて、味方の中に敵が潜んでいる。
さらにこのタイトルは二重三重の意味を含んでいるので、この「死刑執行人」とは誰を指しているのか、といった問いに対する答えを探しながら観るのもいい。
とにかく総合的に優れているので、ここ数年のベスト1かもしれない。思い出したくもなかった「ハイドリヒを撃て!」も、本作と前-後編としてつなげて観るなら状況がよく分かるのでお勧めできる。