「刑事コロンボ」覚え書き2

 

 

コロンボはいつも遠慮がちに、一見どうでもいいような些事に関する質問を重ねる。

こうした態度には遠慮と、躊躇いと、謙虚さと、悪人をじわじわ追い詰める懲罰を楽しむような残酷さが混じっている。ひと言でいうなら老獪であり、遠回りこそが最短距離であるという逆説そのものだ。

それが少しずつ確実に、僅かながら断定的になり、最後には断言する。そのグラデーションが良い。演じる側も演じ甲斐があるはず。

 

 

一方、犯人は「自分こそが真犯人である」という嘘を抱えている。

それは当初、巧妙に隠しきれているつもりが次第に重荷になるため、次第に焦りと自暴自棄と楽観が混じってくる。最終的には諦めと降参と、同時に重荷からの解放が合わさったような表情になる。

これもやはり決まったコースとはいえ、演じる側にはやり甲斐があるだろう。