このところ俳句の本ばかり読んでいるので、気分を変えるために短歌の本を読んだ。
と言っても「ダイオウイカは知らないでしょう」は、バカサイで有名なせきしろ(という名前の人)と、当時はまだ直木賞作家ではない、単なる女流作家の西加奈子の二人がリラックスしつつ、短歌というより短歌らしきものを作った記録である。
「短歌というより短歌らしきもの」というと語弊がありそうだが、二人とも受けを狙う習性が人格に染み付いているようなタイプなので、いかにも短歌であるという雰囲気や、音数といったルールにはほとんど縛られない。自由奔放で才気煥発である。
そういうわけであなたのラッキー短歌は啄木が母ちゃん背負うやつです
好きではなかったアイドルが死亡した日 知らずに自殺しあとおいと言われる
このTシャツのまま死ぬことはできない 着がえるまでは生きるしかない
この三首はせきしろ氏の作品で、他の作品も笑いの中に「死」や「悪」が微妙に入り込んでくるような作品が多い。
対して西加奈子は「今」、「この瞬間」に焦点が定まっているものが多く、明らかに「生」の側にいる。
彼氏のあだなはチャーハン 彼女のあだなは天むす とても仲よし
アーイアイおさるさアイアみなみのアイアーしっぽア うるさいだまれ
もしも、しか言わないお前、今すぐに幼い口を吸ってやろうか
西加奈子は表記も内容も、作品によってバラバラである(ハートの形を書き入れた歌もあった)。
ゲストが出すお題にもかなり個性があって、「臍」「ゆずこしょう」「日本人」などが良かった。
また、プロの歌人が出る回もあり、穂村宏の「短歌では、苦しくなったら体の一部分を入れて詠むといい、というのがセオリーなんですね。」というコメントは参考になった。
早速、来月から使ってみたい技である。