第八話くらいになると、感覚が麻痺してきて多少の事件では驚かなくなっている。
決死の覚悟で敵のアジトに入った主人公だが、国防総省からは「敵のアジトにミサイルをぶち込めばいいじゃない!」といった有無を言わさぬ提案が……!
テロリストよりこの人たちの方が手ごわい敵なので、CTUも主人公も、イエスもノーもないうちにミサイルは発射!はい命中しました!という展開になる。
思うに、今回の主人公は「必死の顔」「普通の顔」「和んでいる顔」「リラックスしているときの顔」「死を覚悟している顔」など、どれも同じになってしまうのでどの場面でもトーンが変わらない。どちらかというと、ここはひとつ兄貴の顔を立てて主人公にした方がよく、9話くらいから突如、
「「もしかして?」」「「入れ替わってる~?」」
という展開も許せる範囲だと思うのだが、絶対にそうならないこともまた確実なのであった。
ところでDVDにはオマケとして別のドラマの第一話がついていることがある。試作品としての第一話はコンセプトや見せ場がはっきりしており、そこそこ魅力的な主人公や脇役が揃っていて楽しいものである。仮に製作開始のゴーサインが出たとしても、2週や3週で打ち切りになるケースすらあるので、そう出し惜しみしてもいられないのだ。
で今回は「女性初のメジャーリーガーで変化球投手!」という内容の話があって、第一話のラストで衝撃的な事故が起こってしまう。
その日、全米中がある女性に釘づけとなった。MLB史上、初の女性大リーガーが誕生したのだ。パドレス傘下のトリプルA所属のジニー・ベイカーがメジャーに昇格、ドジャーズ戦の先発に起用される。幼い頃から父親と二人三脚でメジャーを目指してきたジニーは、デビュー戦を白星で飾ることができるのか。
敵のアジトにミサイル攻撃を仕掛ける「24」に比べれば10000分の1くらいの規模の事故だが、精神的には椅子から飛び上がるほど驚いた。
しかし、残念なことにこのドラマ「ピッチ」は第一シーズンのみで終了とのこと。
子供にとって適切な番組であるかどうかを審議する保護者団体(PTC)も、家族で安心して楽しめる貴重な番組であるとコメントしたドラマで、視聴率が芳しくないと報じられた際には打ち切りにならないよう、放送日の変更などをFOX局に働きかけるなどし、生き残らせようとした番組だったが、願いはかなわなかったようだ。
主人公を演じたカイリーはInstagramで「ジニー・ベイカー役はわたしの人生を変えました。多くの人に共感してもらえる役を演じられたことに心から感謝しています」と述べ、キャストとスタッフとの別れ、応援してくれたファンとの別れが残念だとも言っている。
こうなるともう2話以降を見る機会もないだろう。出会った日が、いきなりお別れの日になってしまった。