このシリーズは「その10」で完結する目途が立った。ここまで連続で読んできた皆さんは、7合目をこれから過ぎようとする辺りである。
今回からは一日二十本前後のペースとなり、やや量が増えるもののゴールは間近である。
ぜひ脱落することなく頑張ってほしい。
武士の一分
「やめてくれ!」と言いたくなるほど喋り過ぎで、説明過多。客はバカではないのだから、台詞を三分の一にしてリメイクしてほしい。
「隠し砦の三悪人」×バディ・フィルムという趣きで、クライマックスの孤立無援の大ピンチぶりが凄かった。
良くも悪くも偏差値の高い西部劇。
これはかなりの傑作。個々にはどこかで一度観たようなエピソードが多いものの、退屈する暇がない。
アクションあり、悲哀あり、ユーモアもサスペンスもあり。
タランティーノが描くような世界でもあり、黒澤映画のように芯が太くもあり、人気ドラマシリーズのような面白さもある。
これは傑作。作り物臭くないところがいいし、説明や音楽が控えめなところもいい。
戦争物としてありがちなヒューマニズムや反戦メッセージ的な部分も少ないし。
バラバラなようでいて「復讐」「父と子」といった安定した構図に収まる、その収まり具合がいい。
ある程度予感させ、ある程度は驚かせるという絶妙の按配の伏線がいい。
重すぎず軽すぎず、飽きさせずの良作。
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若い頃の高倉健を主人公にしてリメイクすれば、もっとヒットする映画。
刑事マルティン・べック
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「隠れた傑作」みたいなコーナーにあったので観てみたが、久々に「何じゃこりゃあああー!」と叫びたくなる終わり方だった。
依頼人~ザ・クライアント
ペラペラな感じの映像で、いかにも90年代風、法廷シーンは少なく死体のありかも平凡だった。
「隠れた傑作」というよりは「隠れてしまわざるを得ない平凡な作品」という感じだった。
モールス信号以外にも、ルービックキューブやいじめっこのムチ、70年代アメリカ風のレコードプレーヤーなど小道具がよかった。音楽が控えめなのもいい。
シッコ
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「アメリカはこれほど酷い」という告発からカナダ、イギリスの現状紹介へと流れ、フランス、キューバへと到る構成が分かりやすくてよかった。
キューバ編はドキュメンタリー映画ならではの感動があって特によかった。
苦くて皮肉で、しかし心あたたまる終わり方。
分類としてはSFだが、突然ホラー的演出があったり、不条理コメディのような空気になったり、軍事機密情報をめぐるサスペンス、「運命の人」との恋愛物のようでもあるユニークな映画だった。
ラーメンズ第17回公演「TOWER」
ラーメンズのDVDはいつ見てもスマートで、しつこくなくて、丁寧に構成されているので損した感じがしない。
スターバックスに入りづらいとか、そういう小ネタが庶民的な所とか、急にZ級スペースオペラみたいな妄想が出てくる所もいい。
ミックマック
フランク・キャプラの「我が家の楽園」とか「スパイ大作戦」をチラホラ思い出しながら観ていて、やっぱりこういう「はぐれ者たちが協力して事をなす」タイプの話はいいなあと思った。
ディストピアSFから敵中突破物のサスペンス、さらに戦争映画に変貌するような作品だった。
所々うまい具合にシャープでスピーディ。
映像もシックでかつ切れがあって良かった。
タイトルとパッケージ写真が酷い。
これは素晴らしい。悪役は強くて汚くてずる賢く、美女は美しくて気高く、そして映画は史実と違っていても別に構わないのだという、当然のことを再確認させてくれた。
あと2,3年したら「キック・アス」というタイトルは忘れてしまって、ヒット・ガールのアクションとクールさの印象で思い出すであろう映画だった。
「夕陽のガンマン」の流れる場面には鳥肌が立った。
これは良かった。「隠し砦の三悪人」みたいな感じもあるし、コメディとしても面白いし、アクションあり、スリルあり、感動もあり。
チョコレート
第一幕の最後に衝撃があって、第二幕はその残響、第三幕はその余韻で成り立っているような話だった。それだけに予測がつかない。
人生や現実がそうであるように、予測できないドラマだった。
ベティ・サイズモア
一人のドン・キホーテをもう一人のドン・キホーテが追うという話で、コメディなのかサスペンスなのか悩んでいるうちにロード・ムービー風にもなる。
これで最後は丸く収まるというのは一種の曲芸的技術。
だが技巧的であっても全体的には秀作止まりという、やや残念な作品だった。
大上段に構えていないので、ちょっと笑いの少ないコメディのような軽さで始まる。
けれどもある意味「人生、いかに生くべきか」という問いをめぐるお話でもあるし、立場によって随分と感想が異なりそう。
苦い味の残る大人の映画。
ナイト&デイ
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スピード感の限界を求めたら、とうとう「省略」に行き着いてしまったという必然手のような新手。
往年の007やヒッチコック映画のような、洒落た軽さがあって良かった。
映画秘宝が泣いて喜ぶようなテイストの、見たまんまの映画だった。
美人過ぎる看護婦さん二人、その他にも画面から零れ落ちそうなほどてんこ盛りでバイオレンス、陰謀、殺し合い、騙し合いの連続。
腸、パスワード、デニーロの最期など可笑しかった。
最高に思える人にとっては最高の映画。
今回のまとめ
やけに褒めている感想が多いが、それは貶している感想を大幅に取り除いたからであって、我ながら酷評すぎ、厳しすぎ、ボロクソすぎて困るような感想も多々あった。
今回は絞ることが難しいので、まず個人的観点から選ぶと「トゥモロー・ワールド」「マイレージ、マイライフ」が良く、ごく普通の読者向けに勧めるとしたら「3時10分~」「ディナーラッシュ」が良いと思う。
観た直後には「傑作!」と思ったものの、今となっては内容を忘れてしまっているのが「トラフィック」と「ハート・ロッカー」である。
「この俳優は脚本を読む力がメチャクチャ高そう」といつも思うのが、デ・ニーロ、トム・クルーズ、ジョージ・クルーニーで、偶然ながらその三氏がラストの三作で揃っており、いずれも良作であった。
ラーメンズやバナナマンのコントのDVDはハズレが少ないので、観たことがないという映画ファンにはぜひお勧めしたい。
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