ポメラニアン日記:pちゃんのヒューズ

以前飼っていた犬は、散歩に行く前はワンワン吠えて「早く散歩に連れて行ってよ!」とおねだりしたものである。

散歩の途中でも「少し遠回りのコースがいい!」と無言で主張して、急に腰を落として足を踏ん張って、引っ張ってもアルファベットのAのようなポーズになって抵抗した。

仕方なく折れてやって遠回りのコースへ行くと、帰りには飼い主の方をチラッと振り向いて、お礼を言いたげな目つきすらしたものである。

そして、帰ると満足して、すっかり静かになった。

このような場合、それなりに飼い犬と飼い主は意志の疎通ができている。抵抗があり、主張があり、妥協があり、譲歩があり、感謝がある。無言の会話を交わしてもいるし、見方を変えれば単なる散歩が共同作業にもなり、達成感のようなものさえ生まれる。

通い合うものが「ある」とはっきり言える。

 

では、pちゃんの場合はどうか?

散歩に行きたいという意味で「ワン!ワン!」と吠える。

これは以前の犬と同じなので理解できる。

しかし、いざ出発してみると、さほど遠くまで行かないうちに大きな円を描くようになって、もう帰宅コースに入ってしまう。

それでそのまま家に戻ってもご機嫌だし、そうでなくてもご機嫌なので、よく分からない。

散歩の途中で何か気になるものを見つけても、ちょっと綱を引っ張るだけで「興味なくなった!」という感じで、またスタスタ歩き出す。

これもよく分からない。もう少し執着してもよいのではないだろうか。

 

その後、帰ってきても「ワン!ワン!」

ご飯をあげても「ワン!ワン!」

食べ終わっても「ワン!ワン!」

静かにしてねと頼んでも「ワン!ワン!」

きりがない。

バカなのかお前は!略してbちゃんか!このバカ犬めが!

と内心でムカムカしながらじっと見つめても、やはり同じように、

「ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!ワン!」

という調子である。

おはようからおやすみまで、頭のヒューズがしょっちゅう飛んでしまっているのがpちゃんである。

意志の疎通もヘチマもない。

通い合うものが全く「ない」ような気がして、こっちが不安になってくる。

 

エーモン 1279 ミニ平型ヒューズセット

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かと思うと、来客のある時はワンともスンとも言わずに、大人しくしている。

「僕は犬のpちゃんです!よろしくお願いします!」

といったニュアンスを込めて、ニコニコ、ハアハアしながら尻尾を振っている。

「まあ、いい子ちゃんね~」

などと褒められている。

 

それどころか、しばらく経つと糸の切れた操り人形のように大人しく寝ているではないか。

陽だまりの中で「スヤスヤ」という音が聞こえるくらい熟睡している。

ヒューズどころか、ブレイカーが落ちたかのような静けさなのであった。

「こういう時は静かなのかよ!ずるいよpちゃん!」

と、声にならない叫びが私の虚ろな心を満たしてゆくばかりである。