また初期の黒澤映画で、「一番美しく」を観てみた。
最初に「情報局選定国民映画」と出るので、やや非国民的な思想を持っていなくもない自分としてはドキッとする。
しかし、始まってみると軍事工場で働く元気な女の子たちがウジャウジャ出てきて、画面からこぼれ落ちるのではないかと思うほど賑やかになる(千石規子はいない)。
情報局が選定するだけあって、彼女らはみな「お国のために働きたい!」という信念に燃えている。病気を隠して必死に働こうとする子までいるので、見ようによってはチョメチョメされた子供の集団のようでもある。
これがもし80年代の映画で、勉強をサボるために仮病やウソを駆使しようとするアホな三人娘が繰り広げる寮生活の話であれば「月曜ドラマランドみたいだな」などと思いつつも心情的にすんなりと理解できる筈だが、今の目で国策映画を見ると思想的に共感も批判もしにくい。「まあ仕方がないですよね」としか言えない。
しかし後半はあまりそういう点も気にならず、自然にドラマが盛り上がってきて、きちんと収束する。
実際の戦時下の雰囲気というものがどのくらい反映されているのかちょっと分からないが、いつの時代も単純に若い女の子たちがよく笑い、よく泣くというのは観ていて気持ちがよい。そして唐突によく歌う点もよい。