「醜聞」がけっこう面白かったので、また黒澤映画の初期作品を観てみることにした。今回は二本分の感想をメモしておく。
まず「酔いどれ天使」は、黒澤映画における三船敏郎初主演作品とのこと。
その三船が病気で顔がだんだんやつれていって、まるで氷室京介のような容貌になってしまう……。と思いつつ観ていたら、まさに「鏡の中のマリオネット」だと言いたくなるような場面が出てきた。
この映画の終わりの方で千石規子がググッと前に出てきて、長い台詞を喋るのがよかった。飲み屋の親父と夫婦なのかと思ったら違っていた。最後は急に若い娘が再登場して「千石規子の場面は終わりです。ハイさようなら」という冷たい感じで終わる。
タイトルの「酔いどれ天使」とは、酔っ払いの医者・志村喬を指している。
ちなみに日本映画を字幕モードで観たのは初めて。
「静かなる決闘」では若い医者が三船で、志村喬はその父親の産婦人科医である。三船は病気をうつされて苦しむ役。
そして、またもや千石規子が見習い看護婦で出てくる。ちょっとすねたような、不貞腐れたような子持ちの見習い看護婦だが、根は素直で三船を尊敬している。クライマックスでは三船と長いやり取りがあってよかった。
最後は「酔いどれ天使」とは違って、千石規子のその後にスポットが当たるような感じで終わり、全体にこの人の成長物語という側面もある。
医者ものとして考えると「酔いどれ天使」→「静かなる決闘」→「赤ひげ」という風に並べることができる。破滅する男の系譜としては「酔いどれ天使」→「蜘蛛巣城」という風に見ることもできる。