この前「挨拶とブログは短い方がよい」と書いた私の場合、映画もできれば二時間半や三時間ではなくて、90分くらいでスパッと終りになる方が好ましい。
しかし例外もあって、生涯で三回目くらいの鑑賞になる「ディア・ハンター」を観直してみたら、長くて苦痛だとか、こことここは不要だろとか、文句を言いたくなるような部分がなかった。
本作は183分という全体の長さ(途中にインターミッションが入る)より、「いよいよ戦争に行きますよ」という若者たちの姿を描いた最初の一時間が冗長だという点で非難を受けがちである。
しかし現代文か何かのテストで「この戦争映画は出征前の日常を描いた部分が4割くらい、戦場そのものはせいぜい2割くらい、残りは帰国して以降の話を中心に4割くらいの時間配分となっています。さて、その理由は?」といった記述問題にでもなれば「平和で長く退屈な日常と、鮮烈で短く狂気に満ちた非日常を効果的に対比させるため」くらいの回答は誰でもすぐに書けそうである。
'Cavatina' Theme from the Deer Hunter
それが映画の感想となると途端に「最初の一時間が長い!」というブーイングになってしまうのは不思議といえば不思議である。
ふざけ半分にデブな仲間を置き去りにして、車で行ってしまってまた戻る(そしてまた置き去りにする)場面の前後など、よく見るとコントみたいで楽しいので、最初の一時間の退屈さに怒っている人には「ここは前振りだから仕方ないだろ」「二度三度と観れば印象が変わるよ」とアドバイスしてあげたい。