話が長い人の分類:地すべり系

 

 

話が長くて困る典型的な例は、話題が地すべりしてしまうパターンである。

私は保険の仕事をしているので、更新の時期になるとお客様の所へ伺って「新しい特約が出ました」「こういう風にすると保険料を節約できます」なんて話をしに行くのだが、本題以前の世間話の時点でもう地すべりを始める人がいる。

 

私:あ、今そこで工事してましたね。

相手:そうそう!あそこの家の前で工事してて!通れなかったんじゃない?通れたかしら?通れた?通れない?若いから大丈夫だった?

私:通れました。

相手:それならいいんだけれども、ねえ?あそこの家はいっつっでっもっ、ねえ?自転車やら何やらがもう、本当にいつも置きっぱなしの散らかしっぱなしでねえ?大変な迷惑どころの話じゃないって、もうあっちこっちで評判なんだからねえ?やりっぱなしなんだからもう。

私:そうなんですか。

相手:かと思うとまあ、あそこの奥さんも、またうんと、ふっ、若いからってこともっ、ふっふ(謎の笑い)、あるんでしょうけれどもねえ、またお子さんたちも平気でそのへんに自転車を置き散らして、さんざん注意したってもう、聞きゃしないんだからってんで、横の奥さんも、真向かいの奥さんもギャンギャンギャンギャン、やれ育ちが悪いだの?何だのかんだのって、そんでもってバイパス沿いのあの何でした?ほら。

私:何ですかね……(今、何の話だっけ?)

相手:そうそう、くわっくわっ(謎の笑い)あの店から出てきた時にねえ、車がぶつけられたっていうんで大騒ぎになって、それでもうセンパンの、あの北校の校長先生の言いつけだからってもう、大変な賠償責任の争いになったくらいで?車から出てきてすごかったって話を奥さんから聞いたこともねえ、去年かおととしの夏?くらいかなーって、秋だったかしら?ほんで結構な金額かかったらしいのねえ、本当に。

私:……(誰か、助けてー!)

 

こちらが1くらいの発言をすると、5とか23くらいになって返ってくる。それで話が弾めば互いに楽しいひとときを過ごせるに違いないのだが、上記のように次第に何の話題なのかわからなくなってくるのだ。

迷惑な家があって、そこに若い奥さんと子供がいるあたりまでは筋道が一応あるものの、バイパス沿いのくだり以降は解釈しづらい。誰の車がどこでぶつけられたのか、それは誰によってなのか、「センパン」は漢字でどう書くのか、校長先生はどう関係しているのか、何が「すごかった」のか、奥さんはどこの奥さんなのか……。

すべてがグニャグニャしており、意味の矢印がどこをも示さずにグルグル回り続けているような、めまいを感じるような独特の世界である。これでも手加減して分かりやすく書いているつもりなので、それをリアルな世界で、生で接している私の気持ちを察していただきたい。