話が長い人の分類:話術が巧みすぎる系

 

 

「話が長い」というと、基本的にはもうそれだけで退屈なもの、迷惑なもの、困ったものだというニュアンスが生じる。

しかし、例外的に話の面白い人もいる。結果的に話が長くはなってしまうものの、とにかく時間の過ぎる感覚としてはあっという間、という嬉しいケースである。

私の知り合いでお店をやっている人がいて、ちょっと買い物に行くとすぐに近所の噂話やら近況やらが始まる。カウンターの前に長椅子まで用意されているので、店の人と客、というよりタダで話す噺家と客の関係のようである。「そうなんですか!」とか「なるほど!」なんて言うだけで話がいつまでも続く。

この人(70代の元気なお婆さん)の場合、後から思い出そうとしても何が面白かったのかうまく思い出せないし、再現も細かくはしづらい。

しかしそこを頑張って、先日、40分くらい聞いた話の大筋を思い出してみると……、

 

1.私が「お店に来る人の中には迷惑な人もいるでしょう?」と訊いた

2.「いるいる!」と話が始まる

3.裏の方に住んでいる迷惑な男がいて、トイレを貸してくれと言ってきて困ったヨ!

4.その時は家に主人がいて、断ってくれたから助かったヨ!

5.その男は、花屋さんから鉢植えを盗んだこともあるヨ!

6.その盗んだ鉢植えの花を、男が近所の交番にプレゼントしてあげてたんだわさ!

7.警察は馬鹿だから、それを喜んでずーっと飾っていたヨ!

8.その迷惑な男は、やがて国道に飛び出して車にはねられて死んじゃったヨ!

9.近所の人たちは全員「あいつが死んでよかったネ」と喜んでたヨ!

 

こんな感じである。

やはりこうして要約を書いても私としては面白いなあ、と思うのだが、読んでいる人に面白さや雰囲気が伝わるかどうかは自信がない。

特に6.7.の辺りはコメディ映画的というか、山田洋次や三谷幸喜の描く世界の出来事のようですらある。普通ならその後こうなった、ああなったと話を延ばしたくなるところだが、大きな理由もなく「車にはねられて死んじゃった」なんていう展開は、ほとんど小学生の頃の雑談を思わせる唐突さである。

なかなかこういう性質の話を聞く機会は減っているので、何だか得をした気になった。「警察は馬鹿だから」とか「あいつが死んでよかったネ」なんていう発言は、下手するとツイッターなどでは炎上しかねないフレーズだが、幸いなことに私のブログはそういう所に噛みついてくる人がほとんどいない。

で結局、この話術に巧みなお婆さんは、話が面白いという自覚があまりないらしく、「お客さんがいつまでも帰らないから困るよね~」と嘆いていた。話が長い人の中にはこういう人もいるのである。