「ウディ・アレンのザ・フロント」

 

 

ウディ・アレンの主演した「ザ・フロント」という映画のタイトルが「ウディ・アレンのザ・フロント」になっていて、何だか変な感じがする。

しかし昔の作品だから何か事情があるんだろうと思って観てみたら、最近の作品よりもウディ・アレンっぽさがよく出ていて面白かった。

 

ウディ・アレンのザ・フロント [DVD]

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と思っていたら実は監督も脚本も別人のもので、ウディ・アレンは本当に主演だけ、という立場であるらしい。

 


The Front 1976 Woody Allen Movie TV Spot

 

それにしても音楽(フランク・シナトラの曲)の皮肉な使い方と言い、全体の長さ(95分)と言い、中身のともなわない代役なのに調子づいて、いつの間にか小学校の講堂で褒められる場面と言い、急にガス会社のスポンサーから横槍が入ってナチのガス室に関する場面を書き直す羽目になるという強引さと言い、インテリぶってヘミングウェイの引用をする場面と言い、クライマックスで女性と口論(というよりほとんど言い訳)する場面と言い、すべてが毎度おなじみのウディ・アレン節すぎる。

 


Frank Sinatra - Young At Heart (Lyrics)

 

話の広がり方としぼみ方、そこに到るまでのテンポ、そして反骨的な精神まで同じなので「別人の脚本で監督です」という痕跡を探すのに苦労するほどであった。おそらく「ウディ・アレンのザ・フロント」がウディ・アレン風であるほどには「男はつらいよ」の新作は「男はつらいよ」風にはならないに違いない。