地下駐車場で憩う男

 

 

駅の近くの文化施設に用事があったので、昼間ちょっと行ってきた。

普段は平地の駐車場に車を置くところを、たまたま今日は地下駐車場にスーッと入っていって、停めてみるとガラガラであった。おそらく土日や、何らかの催しがある時はギュウギュウになる程度の広さである。しかし平日の昼なので、もうガラッガラである。そうなると車の窓を開けても閉めても、音がしない。しかも薄暗くて、ひんやりしていて、誰も来る気配がない。

急ぎの用でもないので、しばらくシートに座ったままボケッとしていた。これが癖になりそうなほど落ち着くのだ。江戸川乱歩の小説は胎内回帰願望がチラチラ現れているというが、その気分が何となくわかる。

 

 

そもそも車は胎内めいた場で、それが地下駐車場となると、二重に胎内的な閉鎖空間になる。さらに曇りや雨の日は、空も閉ざされているようだし、しかも夜にでもなれば、何重にも閉鎖的な膜で覆われているようなものだ。

一時間までは無料で利用できるので、時間を潰す必要のある時は、また意味もなく地下駐車場に入って、安らぎの時間を持ちたいと思った。